後入れかやく

福田村事件の後入れかやくのネタバレレビュー・内容・結末

福田村事件(2023年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

 素晴らしくおぞましい作品だった。差別には中心から周縁へというグラデーションがあって、周縁からさらに周縁への差別があるというのを私たちは知識として持っていてそれを描く作品はたくさんあるのだけれど、その差別構造をここまで物語として「面白く(あくまで括弧書きで)」成立させているものはあまりなく、その点において見事だと思う。こういう作品が増えてほしい。
 親方が「朝鮮人なら殺してもいいのか」と激昂するシーンは、自らが「えた」として受けてきた差別の経験を朝鮮人が受ける差別に重ねる場面があるからこそ胸に刺さるところであって、そういうシーンの積み重ねが巧みだった。智一や静子は朝鮮人を差別するつもりがあるわけでなくただ行商団を助けるためだけに彼らを「朝鮮人じゃない」と主張するんだけど、それは私たちが神の視点から夫妻を見ているからわかるってだけで、すれ違いがうかがえてなおさら辛くなった。
 それと、静子や咲江が「文学」の中の女性らしくどことなく浮いた感じ(虚構の中の女性っぽさというやつ?)がして私は好きだった。