理不尽な鬱映画。結末に向かって、きちんとピースを組み上げて、そこに至るまでの理屈を整えてる。よくできてると思う。映画を見る前に、結末を簡単に調べておくと、（エンタメ性を高める演出だろうけど）そのピースがひとつひとつくっきりとわかるはずだ。
男の愚かさ、女の弱さ、集団の無知・怠惰などを丁寧に描くことで、村の閉鎖性、当時の独特な社会の雰囲気が臭ってくる。連絡手段がないからこそ何をやってるかわからない。ちゃんと話さないから理解できない（まぁコミュニケーション技術が発達しても理解し合えてない部分もあるけど）。少年が嘘ではなく真摯な言葉で薬を売り、少女がひたむきに少年を待ち続けた姿がただ眩しい。最後、少女が赤ん坊を抱えてるかわからないように撮影してたから、どきどきした。
記者が「御上のことを信じて、記者のことを信じないんですか」という言葉を発する。組織が発表したことは大抵が真実であり、誤りがあってもその責任は発表した側になすりつけられる。一方で不都合な真実は基本的に皆語りたがらず、記者含め少数が観察したことで、その誤りの責任は当然発表した人間・組織が負う。だから発表に頼ってしまう。一方で、国民は少数の言葉を受け止める覚悟はあるのか。「朝鮮人だからいいんか？」日本人だったから大事件になっただけなんじゃないかと思ってしまう。
いい映画だよ。起きた事件をよくちゃんとエンタメ性をもたせて映像化したと思う。鬱だけどな。
