福田村事件のandyのネタバレレビュー・内容・結末

行商人集団の親方（瑛太）の言葉が突き刺さります。
「せんじん（朝鮮人）なら殺してもいいのか！」

讃岐から出てきた行商人の集団が、千葉県福田村で朝鮮人と間違われ一触即発の状態です。観ている我々は、当然ながら日本人とわかっているので早く誤解が解けてほしいと願います。
しかし、ちょっと待て。「せんじん（朝鮮人）なら殺してもいいのか！」と、親方の言葉が我々観客にも響きます。
誰しも他者にいかなるレッテルも貼ってはいけないはずです。まして、生殺与奪の権利など誰にも与えられていません。
この不条理に福田村の人間、観客までもが誰も気づかないのです。

福田村の住人はみんな善良な市民です。
故に、真面目にお上の指示に従い自警団を結成して、朝鮮人を見つけたので（⁉︎）適切に対処しました。善良な市民が故に暴走した教科書に出てくるような行動です。
福田村の住民に行商人の集団が囲まれて生まれた緊張状態。その後、一人の女性の行動が引き金になって善良な村民が無垢な殺人者に変貌していきます。その様子がとてもリアルに描かれていました。

彼らには自覚はありました。日本人が朝鮮人をいじめていることを。福田村の人間だけではありません、日本人ならみんな知っています。だから心の奥底に罪悪感が沈澱しているんです、善良が故に。
やったからやり返されるーそれが流言飛語を信じてしまった一つの原因だと思いました。

また、丁度100年前の出来事で、情報機器も発達していない時代なので流言飛語もやむをないかと考えてしまいましたが、よく考えるとSNSが発達した現代でもフェイク情報が後を断ちません。つまりは、時代に関係なく私たちはデマに流されるということです。

未だに関東大震災後の朝鮮人虐殺はなかった、記録は残っていない等平気で言われる方が一定数いるので、何故認めたくないのか、その心象風景を知りたいといつも思っています。凄惨な事件が起きてしまった事と、それを史実として認めることは全く別物だと思うのですが、それがどうも混同されているように思います。南京事件も従軍慰安婦問題も然りです。

我々日本人が避けて通れない、朝鮮や中国を初めてとしたアジア人への蔑視感情、差別意識。明治維新以降、征韓論に代表されるようにアジア進出を当然のことして、日本は西欧列強から受けた振る舞いを、同じようにアジア各国に繰り返しました。その影響は現在も続いています。

関東大震災後の朝鮮人等の虐殺事件について取り上げた作品で、日本人みんなに観て欲しいですし、史実を知るための教科書だと思いました。日本人は朝鮮人虐殺についてはまだまだ無知なのではないでしょうか。幸いこの作品はヒットしているようなので、日本人も捨てたものではないと思います。

私自身も知らないことが多くとても勉強になりました。