さー

トルーマン・カポーティ 真実のテープのさーのレビュー・感想・評価

3.8
トルーマン・カポーティ
とても一言では表せない彼の波瀾万丈な人生を、あえて言い表すならば、「虚構の世界の中に真実を見出そうとした作家」とでも表現できるだろうか。
残された映像で見る彼は、終始道化のようで、特に晩年は薬物依存の影響もあって目も当てられないような姿を晒している。

今回集められた映像やインタビューは、「トルーマン・カポーティ」という稀代の作家を生々しく浮かび上がらせるが、しかしその姿はどこまでも軽薄で捉えどころがなく、彼自身が演じていた「トルーマン・カポーティ」の域を出ない。本当の彼は何処にいるのだろう、何処にもいないのだろうか。自身を取り巻く虚構の世界の中で、彼が真実の自分を感じられる瞬間はあったのだろうか。

カポーティ自身の人生について何も知らない時に読んだノンフィクション・ノヴェル「冷血」は、一度読めば読む前の自分には戻れないと感じさせる傑作で、さぞや分析力に長けた理知的な作家の手によるものなのだろうと思わされた。
のちに知ったカポーティの経歴や人柄は、その時のわたしの予想を斜め上に軽々と超えていったが、むしろいっそう興味がかき立てられた。彼の実像を知りたいという気持ちは、何もわたしに限ったものではなく、だからこそ今作のようなドキュメンタリーが作られるわけだけれど、やはりその姿を見れば見るほど分からなくなってしまうというのが正直なところ。せめて同じ時代を生きてみたかったと思うばかりだ。
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