NaokiAburatani

機動戦士ガンダムSEED FREEDOMのNaokiAburataniのレビュー・感想・評価

機動戦士ガンダムSEED FREEDOM(2024年製作の映画)
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20年待った‥
20年待ったんだけどなぁ‥

【良かったところ】
MS戦と艦隊戦が劇場版クォリティでデカい画面が存分に活かされていた。これには思わず超スーパーすげぇどすばい…と言わざるを得ない。

観たいMSとキャラの活躍が観れたこと。そういう意味ではお祭り騒ぎのファンムービー感があって良かった。特にイザークとディアッカのMSでの活躍はコマ送りで何回も観たい。後シンが何も考えずに戦ってることの謎の説得力。

ディスティニーの頃はキラとアスランがイマイチ心情明かしてなくて得体の知れなさがあったけど、結構お互いが思ってること口にしてくれたりしてくれたのが観れて良かった。
ケンカ止めに入ったシンが2人からいいのもらってんのは鬼越トマホーク味があってちょっと笑った。

【気になるところ・愚痴】
お祭り騒ぎのファンムービーとして観れば良かったのだろうが、いくらなんでも巫山戯過ぎていて観ていて「うわぁ‥」と思うシーンが多かった。ステラの怪物化とか誰得だよ‥
劇場版の割にキャラ作画がたまに崩れてたような気が‥

登場人物たちが恋愛脳過ぎてもうちょっと真面目に行動して欲しかった。

ディスティニーのラストで一緒に戦おうって言われて嬉しかったとは言っていたけど、結局シンは何でキラにあんなに懐いてるんだっけか?本来のシンはああいう子供らしい性格かもしれないんだけど、キラに対する態度が忠犬通り越して洗脳されてんのか、って位に全幅の信頼を寄せててモヤモヤした。信頼相手が議長からキラに変わっていてあれを成長と捉えて良いのだろうか‥後、ムゥが活躍すればするほど、どうしてもネオ時代のやらかしがチラついてそこもモヤモヤ。シンはムウに対してもっと怒ってよいと思うし、ステラ出すんなら其の辺のやり取りをワンカットでも入れて欲しかった。

ファウンデーション達の厨二病的センスとかキャラ付けとか台詞とかが古臭かった。昭和ロボアニメの悪の帝国感強過ぎたし、やってることと思想が議長の焼き直しだから目新しさがなかった。一つだけ違うのは自分達の目的のために自作自演で自国に核打ち込んだド外道ぶり。普通に引いた。
女帝、宰相、親衛隊長のトップ達の煽り耐性がいくらなんでも低過ぎる。新人類自称しているのに人間臭いがゆえに負ける皮肉めいた展開やりたかったんだろうが、ちょっと煽られたら瞬間湯沸かし器ばりに急に怒り出すから三バカことブーステッドマン並みに情緒不安定にしか観えず、ビックリした。女帝が癇癪起こさなけりゃ少なくともオーブ潰せてアスランとはもう少し良い勝負出来たんでは?
近衛隊がモビルスーツ部隊の隊長が生身でサーベル使えないこと煽っていたがそれは必要な技能か?
近衛隊以外の兵士の存在感が一切なかったのは全部自動操縦とかって設定があるんだろうか。

カガリ以外の組織のトップ達が護衛付けずに一人で好き勝手動き回る問題が気になった。ファウンデーションの宰相が差し入れこっそり置いたラクスを追っかけてるキラに嫌味言うために港で待ち伏せしてたとか考えたらすげーシュールだった。ラクスもラクスで護衛も付けずに人の国で動き回りすぎだろ。

なんで一般兵士であるアグネスが他国の軍事機密であるはずのモビルスーツデッキに来れたんだろうか。相変わらずこの世界にはセキュリティという概念がないのかよ。

キラが暴走した時に「ミケールを見つけた!」って再三言ってたのに何で誰も信じてやらねーんだよ。キラもキラで自分が操られてたこと分かってたのになんでラクスが裏切ったとか言っちまうんだ‥敵に拉致されてるラクスの身の安全を誰も心配してねーし‥

場面変わるごとに画面下部に細かく場所のテロップ出し過ぎ。ラクスとキラの家とか出されなくても流石に分かるわ。馬鹿にしてんのか。
手料理作って待ってたら、旦那が仕事で帰りが遅くなる一報聞いてサランラップしてソファで寝てるって、いつの時代の演出なんだ。百歩譲って二人のすれ違いを演出したのかもしらんが、次の日普通に二人でバイク乗ってピクニック行ってたら意味ねーだろ。

結局カガリ役の進藤尚美さんが降板した理由は何だったんだろうか。白鳥哲さんもサイ出て来てんのに、一言も台詞ないの不自然過ぎ。シンの心中よりもこの辺のがよっぽど闇深い。

名作クロスアンジュ(福田監督はプロデューサーとして参加)は最初からギャグ含めそういうもんだ、として観れたからすんなり展開とか演出が受け入れられたんだが、SEEDはTVシリーズ2つが下敷きにあるためあんまり振り切って欲しくない方向に振り切られたのが単純に嫌だった。前2作でエロはあってもスケベはなかったのにアスランの破廉恥妄想とか観ていて恥ずかしくなった。まぁ、そのエロも今作においては
不自然に服だけ破れたマリューとかいちいち挿入されるラクスのセクシーカットとかノイズにしかなってなかったが。

演出先行で外連味はあるんだけど、イマイチ意味が分からないことがあったのは、個人的見解にはなるが、宇宙世紀だけでなくGガンダムやビルドファイターズ、ヤマトやドラグナーからもオマージュに入れたからだと思う。それ故に整合性がなくなってしまったが、まぁ、其の辺は設定深堀りすればある程度納得出切るのか?(シンの実像があるとしか思えない分身とか、ジャスティスのズゴック偽装とか、マイティフリーダムの外で見栄を切るラクスとか)ミラージュコロイドってディスティニーの時条約で禁止されてたはずなんだが、味方側がバンバン使ってたのはどういう了見だったんだろうか。

何でキラとラクスは戦闘終了直後に帰艦しないで浜辺で全裸になったんだろうか‥
ラストのありがたい説法は、是非ブルーコスモスの前で同じこと言ってみてもらいたい。

そして本作最大の問題点はストーリーの最初から最後まで起きた問題が何一つ解決していないうえに、何の展望も答えも出していないこと。ラクスへの愛が武器なのは結構なんだが、C.E.世界の閉塞感が一切打開されていない上に棚上げされた事案が全て丸投げされて結局ただの勧善懲悪で物語が締め括られたのは残念でならない。モビルスーツの性能で力が決まる訳じゃないらしいが、結局モビルスーツの力で相手皆殺しにしてるから説得力ないし、ハッキリ言って物語もテーマ性も薄っぺらかった。
コーディネーターの出生率低下問題があるんだからキラとラクスに子供が出来て未来への展望が出来る展開とか妄想してたんだが‥

監督の観てる人を喜ばせたいという気持ちは分かったんだけれど、当時ネットで散々ツッコまれていたことネタにしたり、ガンダムだけじゃなく他作品からも節操なくパロディ演出入れまくることに対して冷めてしまった。
SEED直撃世代の自分が20年経ってその輪から外れてしまったんだな‥

監督はこの20年が2、3年位の感覚だったと言っていたがマジで時が止まっていたのか、目まぐるしく価値観や情勢が変わっていった世間に興味がなかったのか‥続編公開で盛り上がっているこの祭りにイマイチ乗れなかったのが重ねて非常に残念だった。
NaokiAburatani

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