SEEDは昔なぜかDESTINYだけをリアタイで数話見たのみだったため、今回改めてダイジェストと総集編を見た上で鑑賞。
付け焼き刃で予習したため、勘違いや理解不足な点があるかもしれません。
まず、総集編の方の感想として、思った以上に面白い世界観とよくできた脚本だと思いました。
遺伝子操作、というSF的対立軸を作ることで、現実の宗教や地域の紛争をそのままトレースすることなく、戦争を描くことができている。
キャラクターが陣営を行き来し、葛藤する人間模様も味わい深い。
一方で、特にDESTINYの方の、デュランダル及びデスティニープラン、の説得力の弱さが気になりました。
一面では正義でもあるが、それでも否定せざるを得ない「忌避されるべき正義」「愛したくなってしまう悪」が上手く描けているエンタメは名作だと思っているのですが、
デュランダルという人物は、共感すべき過去や思想も説明されないし、語り口もシャアの下位互換という感じでカリスマ性を感じられない、何よりデスティニープランは、本当にその全体主義の管理社会もどきで戦争が止められるのか？一体誰がその思想に賛同する？と疑問符しか感じないテーゼで、
主人公たちが戦うラスボスとしてパンチが弱すぎる、と思いました。
私はSEEDの中だとシンが好きなのですが、もしデュランダル及びデスティニープランがもっと心酔されて然るべき人物及び思想なら、心に傷を負った彼がそこに傾倒して迷走する姿も理解できたと思うのですが、シン自身ですらあまり思想に納得していなさそうに思えるのに、なんとなく友人が信じてるから…というぼんやりとした理由で狂信しているかのように振る舞い無茶をする。
DESTINYの後半は、何を言っているんだ、何をしているんだ、なんなんだお前は、と言ったセリフをキャラクターが発するたびに、それを言いたいのはこっちの方だ！！とツッコみたくなってしまいました。信じてもいない思想を信じて自滅したかのように描かれてしまったシンが哀れでなりませんでした。そのあと、今度はまた別の縋る先としてキラを選んでしまったのも不健康でいただけない。彼はもう、強さ以外に信じるものを見つけなければいけなかったのに。
そしてFREEDOM。そんなデスティニープランの「戦争を止める術」としての説得力の弱さという欠陥を、映画版では別の思想を提示し、その善悪を問うことで挽回してくれると思っていたのですが……
またデスティニープラン引っ張るのか〜い！！！！！
しかも、今度は提唱者亡き後のその信奉者との戦いって……ラスボスを倒した後に、ボスの部下と戦う延長戦を見せられているような気分でした。
しかも、この新たな敵たちの小者感……いや、時間の限られた劇場版で、魅力的な敵役を作り上げる難しさは分かりますが、どこかで見たことのあるような、罵詈雑言・嘲笑・キャハハ笑い・ヒロインは俺のもの権力者……あまりに画一的で魅力がなくて、これでは敵役が可哀想ですよ、ただの使い捨ての駒じゃないですか…私にもっと愛させてくれよ、敵役を…愛せるような敵役をくれよ……！
あともっと残念だったのが、ナチュラルとコーディネーターの戦争をどう止めるか、という遺伝子操作の対立軸がまるでなかったかのように、劇場版ではコーディネーターの強化版と、一般のコーディネーターとの戦いが主軸にすり替えられてしまっていて、おいおいおいおいお前らが争ってどうすんだよ！？お前らが争ったところでナチュラルとの戦争は止まらないんだよ！？そこんとこちゃんと考えてんの！？と思ってしまった……。
あとはあまりにしっとりとしたラブロマンス。
湿度高過ぎ。
私は鉄血は乾いた世界観、SEEDは湿った世界観だと思っているのですが、
いいんですよ、別に、ラブロマンスがあったところで。
でも、戦争という重い題材を扱うストーリーに、ラブロマンスはほんのひと匙だけでいいんです。いざ敵を殺そうとするときに、ふっと脳裏によぎる面影があって弾道がぶれるとか、死の直前に思い出し涙するとか、そういうのは心に響くんです。
ただそれを、女を巡る戦いとか、浮気してるんじゃないか、自分はふさわしくないんじゃないかとか、そういう昼ドラみたいな色恋沙汰自体を対立軸にして戦争を繰り広げてたんじゃ、正義も悪もない、ただの身勝手で無責任な気分屋ですよ。主人公だろうが正義を語る資格なし。
……と、まぁ、ストーリー的には残念だな、と思う点もあったのですが、作画はとても良かったし、致命的な欠陥もなくうまくまとめられている映画だったとは思います。私、ガンダムは批判されてこそ完成すると思ってるので、鉄血も批判点含めて考えさせてくれる作品として好きだし、SEEDもこれはこれでいいのかもしれませんね。
何よりシンがわんこみたいで可愛かったから…よしとする…。
とりあえず私は鉄血のオルフェンズも劇場版いつまでも待ってます。
