MAENOLI

機動戦士ガンダムSEED FREEDOMのMAENOLIのネタバレレビュー・内容・結末

機動戦士ガンダムSEED FREEDOM(2024年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

202430


TVシリーズをしっかり見てはいないが概要は知っているという状態で鑑賞しました。
どこに視点を置くかで評価が全然違ってくる映画だと思いますが、自分はこの映画が好きではありません。
現実に戦争で毎日死者が出ている状況なので、戦争や虐殺をエンタメとして消費することに抵抗を感じてしまったのかもしれません。

敵方のやろうとしていることがとんでもないというのは解るし、主人公には彼の苦悩があるんだろうというのは理解はできるけど、かと言ってそれを差っ引いても主人公の言動にはとても賛同できないし共感もできない。というか、自分のせいで大量の人が殺されている時に自分と恋人の関係のことばかり気にしている人に同情なんかしたくないです。
彼らの正義のための行動に巻き込まれて人生を奪われた普通に暮らしてた人達からしたら、彼の苦悩なんて知ったこっちゃないし、本当に気の毒すぎます。自分もあの街に暮らしてたら何にも知らされないまま一瞬で焼け死んだんだろうなーと思うと、なんとも言えない嫌な気持ちになりますし、どうしてもウクライナの空爆やガザの虐殺が頭を過ります。

結果的に大虐殺に繋がった主人公の行動を主人公自身が顧みるくだりもなく、味方側の登場人物たちもそれをとくに批判しないので(彼の行動で何万人か死んじゃったけど、撃ったのは向こうだし、彼は優しくて悪気はないからまあしょうがないよねっていう認識なのでしょうか…???)、彼らの倫理観に対する疑問符が止まらなかったです。一体この作品の人権意識はどうなっているのですか?

独善的で自己中心的で市井の人々の命に関心がない人間が主人公なのが嫌、というわけではないのですが、そうとしか思えないような言動の主人公が、何故か作中ではとても「人間的に優れて」いて「徳がある」かのように描かれていることには非常に違和感がありますし、気味悪くも感じます。あの世界の(特に彼のせいで損害を被った地域の)人々のその後や彼(や彼の組織)をどう思っているのかという描写もないですし。作中で主人公は度々「優しい」と表現されていて、たぶん実際に相対した時にはとってもお優しいんでしょう! が、「彼が優しいということ」と「彼が短絡的思考で虐殺のキッカケを作った結果大勢の人が死んでしまったこと」は同時に存在する全く別の事柄ですし、後者についてなんらかの形で責任を問われるべきだったと思います。

脚本もなかなかにカオスで、そもそも世界の平和のための組織の幹部の人種が偏りすぎとか、核の扱いが軽すぎる(オッペンハイマーやはだしのゲンとセットで観ると丁度良いかもしれませんね!)とか、ことの発端となった問題が未解決のままその後言及されずに終わるとか、あのお母ちゃんが学生だったところからどういう経緯でああなったのか描かれないとか、能力的に優れてるというということになっている筈の敵側のキャラクターたちに全く思慮深い様子がない(能力というのは運動能力だけを指しているのか?)とか、戦闘に勝ったところでいい感じに終わったけど今後民衆があの平和維持組織?を支持するとは思えないし、最高責任者であるはずの彼女はこの件で責任を問われるのでは?とか、諸々言い出したらキリが無いのですが、始終腑に落ちなかったです。

キャラクターを見ることやツッコむことを前提として観ることが目的なら楽しめるのかもしれないですが、特に個々のキャラクターに思い入れのない自分としては、作品の完成度という意味でも、倫理的な意味でも、支持できない映画でした。
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