さよこ

正欲のさよこのレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
4.8
【人間の欲に正解も不正解もないけれど…🙊】
年始は明るい映画からスタートしたくて、どうしても年内に観ておきたかった作品。観て良かった。

🫧全体の感想
一般的な''普通''から少しはみ出した3エピソードがそれぞれ進行し、やがて接点を持っていく構成はとても面白かった。マイノリティ=LGBT、という構図になりがちだが、そうではない多様性を提示している。正直共感できる部分は少なかったけど新鮮なテーマだと思った。

🫧抑圧された日常
不登校の二人を除いて、マイノリティな青年や大人たちはずっと見えない何かに抑圧されながら生きていて、それは表情や態度にも表れている。自分らしく生きれないことの窮屈さは、心の余裕のなさに繋がり、やがて常態化した人格形成にも大きく影響するんだろう。ただ、それが他者を傷つけて良い理由にはならない。ギリギリのところで踏みとどまっていた糸が切れてしまったのだとしても、やはり映画が意図してるメッセージを見えにくくしているノイズのように思えて、やや残念だった。

🫧正しい欲とは?
常々、恋愛や性の対象が異性である必要はないし、好きなものを好きに愛せばいいさと思っていたけど、ここに小児性愛者が加わるなら話は別だ。この映画にペドが加わってしまうことで加害性のある欲まで、正欲として肯定するメッセージになってそうで、とても気になった。でも好きになっちゃうものは仕方ないし、性癖は自覚して変えれるものでもないから、自分の欲を外側に出さないようにして生きてくれ…としか言いようがないよね…。それを好きになって何が悪いと開き直られるのはとても困る。こういう持って生まれたものが他人に危害を加えるものだとしたらどうしたらいいんだろうね、難しいね。

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⚠️この先、ネタバレあります⚠️
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🫧印象に残った台詞
『どこにもいかないよ』
素敵な台詞でもあるし、煽りレベルも非常に高い。

🫧ソーシャルスキル
田舎では結婚や出産が1つの共通言語みたいなところがあるから、あの年齢くらいなら触れて欲しくない話題になったときに他の話題に切り替えるとか、うまいかわし方の1つくらい身につけても良さそうなのに。自分が世間に不満を持つのは勝手だけど、せめて職場は周りと円滑にやっていこうという気持ちは持って欲しいし、妊婦さんへの気遣いもなくて単純に人間としてどうかと思う。言葉の端々から私を不快にさせる周りがいけないんだという被害者意識が感じられて好きになれなかった。歩き方、喋り方、姿勢、目つき、どれも陰険で、この若手女優さんやばすぎ。役に入り込んでる。見たことないな、舞台出身?と思ったら新垣結衣でした。え!新垣結衣?あの??とエンドクレジットを二度見した。普段は黒目カラコン入れてるのかな、全然印象違う。良く考えたら新垣結衣の出演作品、映画もドラマも観たことなかった気がする。こんなにすごい女優さんなんだと改めて知れて良かった。

🫧差し伸べられる手
印象的だったのは大学生たちのエピソード。何か1人で抱えこんでいそうだから助けてあげたいと思っても、本人が望んだカタチでないと善意は空回りする。陰で「◯◯くんをよろしくね」と母親ヅラしてる先輩もどうかと思ったし、それを真に受けたトラウマ持ちの行動も痛かった。親しい仲でもないのに突然過去のトラウマぶちまけて、あなたも闇を抱えているんでしょ?私ならきっとあなたのことを理解してあげれるよ!ってゴリ押しするのは観ていてとてもしんどかった。あなたはまず自分のトラウマ克服に専念しようよ、傷の慰め合いは解決ではなく停滞なのよ。悪い子じゃないけど、あわよくば的な思いが多少なりとも含まれていそうで、何だか物凄いシーンを目撃しちゃったなと思った。

🫧運命じゃない人
トラウマ持ちの女性にとっては''怖くない男性''に出会ったことで、この人以外いないと運命感じちゃったかもしれないけど、あなたにとって希少な出会いが、相手にとっても同じかどうかは別なんだよね。彼が言ってた「何で自分が理解する側だと思ってるんだよ」に全てが詰まってる。自分から見える世界(=大学)以外のことを一切無視して自分のなかで物語を組み立てているのが、彼女のトラウマからくる視野の狭さだと思った。学校以外にもコミュニティはあるっていうのが、人間不信の彼女にとっては思いもよらなかったことなのかもしれない。この作品に出てくる女性陣は往々にして認知の歪みが著しく、女性側をこういう描き方をしているのは珍しいと思った。

🫧向いてない仕事
頑ななまでに一般常識の範囲内で考えようとする父親。これまでの事件でたくさん普通じゃない人や一線を越えてきた人を見てきたはずなのに、なお常識にとらわれ「そんなことありえないけどね」と切り捨てるあたり、この仕事向いてないんじゃないかと思った。聞く気がないなら最初から質問してくんなよって思うし。その一方で、普通からはみ出すことを非常に恐れているのは、今まで犯罪者と対峙してきたからかもしれなくて、どういう過程で一線を越えてしまったのかを知ってるから、子どもにも「普通(=マジョリティ)」の人間とたくさん接して、そっち側にいて欲しかったんだと思う。

🫧終わらない喧嘩
壮絶な夫婦喧嘩のシーンは、二人とも論点が噛み合っていないまま怒鳴り合ってて観ていてつらかった。夫は小児性愛者のことを心配(&YouTuberを辞めるきっかけにしたい)していて、妻は子どものやりがいに目がいってる。結局、妻は小児性愛者から守る手段を講じてないし、その考えが安全ではないトレードオフの関係になっていることに気付いていない。アカウントがバンされたときの対応方法は調べればすぐ分かることなのに、他人に聞いて解決しようとしているし、この先、この母親は悪い人に騙されそうで危なっかしさを感じた。世間の夫婦たちは教育方針違った場合、どうやって折り合いつけるんだろうか…ワントップのほうが方針ブレなくて良いよね…家族って難しいね…。

🫧その他、色々
・方言に違和感。無理に喋らせなくても…。
・LGBTを思わせるミスリードが良かった。
・吾郎ちゃんがちゃんと嫌なやつでよかった。
・ケチャップ別添えでお上品…
・久しぶりにみた、チャンネル争い。
・子ども部屋おばさん…
・20年近く会っていない同級生の家を監視したり、尾行したり、めちゃめちゃ怖いんですけど!!!
・同志をみつけて急に憑き物がとれた新垣結衣。
・窓割るの普通に犯罪でドン引き。
・孤独やストレスからくる加害性の爆発。八つ当たり。怖い。怖すぎて、こんなヤバい女と一緒に上京するってまじ??て思った。
・陰キャDT男子と思考が似てる気がする…
・裏アカで写真リクエストするの怖いよー
・人間以外を愛すること自体、別に誰も否定してなくない?そんなに何か嫌な思いした??授業のときくらいじゃない??
・子どもたちへのYouTubeの影響力よ
・恋愛対象じゃない人から恋愛対象として見られるのはキツイよね…ミスコン出たから余計に大変だったろうな…。断ること自体がストレスだもんね…。
さよこ

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