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正欲のdaiyuukiのレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
4.7
横浜市在住の検事・寺井啓喜(稲垣吾郎)は、息子が不登校になり、教育方針をめぐり妻と度々衝突している。
広島のショッピングモールで契約社員として働いている実家暮らしの桐生夏月(新垣結衣)は、代わり映えのしない日々を送る中、中学のときに転校していった佐々木佳道(磯村勇斗)が地元に戻ってきたことを知る。
ダンスサークルに所属する諸橋大也(佐藤寛太)は、準ミスターに選ばれたほどの容姿。
学園祭のダイバーシティをテーマにしたイベントに大也が所属するダンスサークルの出演を計画した神戸八重子(東野絢香)は、大也のことを気にしていた。
家庭環境も見た目も性的指向も異なり、異なる場所で生きてきた彼らの距離が少しずつ近づき、ある事件をきっかけにそれぞれの人生が交差する。
『桐島、部活やめるってよ』『何者』などを手がけた作家・朝井リョウの第34回柴田錬三郎賞受賞作を「前科者」の岸善幸監督が映画化した群像劇。

最近、性的マイノリティを理解して尊重するのが、スタンダードになっているけど、マイノリティの中でもさらに理解するのが難しい生き物ではない無機物に性的興奮を感じる「対物性愛」の人々が、社会の中で孤独感を感じながらも自分と同じ嗜好の人と繋がり生きていこうと足掻く「ダイバーシティ」とか「多様性」の隙間に堕ちた人たちの「学校行って結婚して子供を育ていく」のが普通で正しいという有形無形の圧に抗い居場所や理解者を探して彷徨う群像劇と「普通が正しい」と思い込んでいる寺井検事が不登校の息子に戸惑い苛立ち歩み寄ろうとする葛藤が次第に交錯していく様にヒリヒリする。
特殊な性癖の夏月や佳道や大也を演じた新垣結衣や磯村優斗や佐藤寛太の孤独感や苛立ちを内に秘めた抑えた演技がより切実で、終盤にマイノリティの価値観を存在することも理解しようとしない寺井検事と特殊な性癖を持ち安易な理解を拒絶する夏月がぶつかり合う会話が突き刺さって、多様性やダイバーシティというお題目の隙間に落ちる闇の深さや「普通」と思う自分の価値観を容赦なく揺さぶられる社会派ヒューマンサスペンス映画。
「この世界で生きていくために手を組みませんか?」
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