正秋

正欲の正秋のレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
3.4
生きづらさを抱えた人たちの痛みを突きつけられる映画でした。

視点人物を切り替えながら、それぞれの苦悩を描いて物語は進みます。特殊性癖、不登校、男性恐怖症etc…。「普通」から外れた人たちが必死に「普通」であろうとする痛みと孤独に、この映画の視点はフォーカスしています。役者さんの演技も真に迫っているので、人間の生の感情をぶつけられているような気分になります。

「普通」という空気の醸し出す圧迫感と、それからの解放が物語のテーマとなっています。
田舎の人間関係、性癖、恋愛、結婚、親子など。
稲垣吾郎演じる検事は、普通であることを無意識に迫る、いわば世間の代表者です。理性的で穏やかな人間のように見えて、普通から外れた人間には共感を示さない。自分の不登校の子どもには学校行けの一点張りで、子どもがYouTubeに興味を持ったらバッサリ切り捨てる。普通である事を強要してくる人物です。いるよなあ、こういう人と思わず納得してしまういい演技でした。

そしてラスト、世間の代表者稲垣吾郎と新垣結衣の対決シーンはメッセージ性があって良かったですね。
他者と関わることを諦めなかった主人公たちが得たもの、「普通」を疑うことのない稲垣吾郎が失ったものが対比して示されます。

何気なく生きている自分も、誰かに大勢にとっての「普通」を押し付けているのではないかと考えさせられました。
正秋

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