正秋

ゴッドファーザーの正秋のレビュー・感想・評価

ゴッドファーザー(1972年製作の映画)
5.0
やっぱりIが一番面白い。

言わずと知れた名作ゴッドファーザー。三部作として評論家人気の高いⅡ、賛否両論のⅢとありますが、何度見ても結局Ⅰに戻ってきてしまうのは私だけでしょうか?

個人的に特に好きなのは無言のシーンです。この映画、語らないシーンの見せ方がじつに憎い。重要な変化を伝えるシーンはセリフで語らずに、演技とカメラワークで見せてきます。余白を考えせる事で生まれる味わいが素晴らしいです。
例えば堅気のマイケルがはじめて殺しをするシーンなどは最低限のセリフで進んでいきます。殺しの前はトイレでなかなか銃が取り出せない様子を緊迫感のある表現で見せ、対比するように敵を銃で撃ち抜いた後は淡々とした描写です。マフィアとしてのイニシエーションを済ませた人間の変化をこれ以上ないくらいシャープに描いて見せます。
そしてラスト、マイケルの変化を伝えるのが、妻視点から見たマイケルの姿というのがまたいい。女性たちを部屋から追い出し会議を始めるマイケル。冒頭の結婚式と対比するように、合わない視線、そして妻の顔のアップ。変わってしまった人間と、それを悟る人間。3時間のすべてがワンシーンに集約されていく素晴らしい演出です。

若きアル・パチーノの熱演、余裕さえ感じるマーロン・ブランド。ニーノ・ロータの名譜、ゴードン・ウィリスの革新的な映像表現。シナリオ、演技、撮影、音楽……etc。どこを取り上げてもハリウッドの歴史に残るようなレガシーです。
まさに死ぬまでに見ておきたい作品です。
正秋

正秋