ハナハナさん

正欲のハナハナさんのネタバレレビュー・内容・結末

正欲(2023年製作の映画)
2.9

このレビューはネタバレを含みます


 水に性的な魅力を見出す少し特殊な性癖を持つ主人公は、幼い頃から地球に留学した宇宙人のような気持ちで生きてきた。誰にも本当の気持ちを打ち明けられず一般的な価値観に溶け込めないで生きづらさを抱え静かに生きている中で、インターネットを通じ同じ気持ちを共有できる仲間と出会う。



世界には本当に様々な性癖の人がいて何が正しいか正しくないかと決めることは出来ない。個人的な性癖を全ての他者に理解してもらうことは意味がなく、不可能だけれど、やはり人は誰かと繋がり分かち合いたいし、何を愛するかは自由だ。しかし公共良俗に反することや他者を傷付ける行為は許されるべきではくて、この映画でそういう意味での「正しくない欲」を持つ者は誰も傷付けないでそっと生きていた水性愛者たちではなく、その欲によって子供たちを傷付けた男児性愛者の元教師、そしてネットで性犯罪を共有し合っている者たちだ。

水を楽しむ水性愛者の登場人物たちの画はなんだか透明で、綺麗で、夢の中のように遠くに見えた。一方で、小児性愛者の元教師の行った児童買春や盗撮行為などは陰惨で悍ましく目を背けたくなるし、しかし実際に毎日ニュースで目の当たりにするより身近に感じる現実だと思う。
世の中に理解され難い性愛であるという点では同じかももしれない。多様性の尊重が叫ばれる時代でも、わたしは後者を絶対に許容出来ないし、その欲の発露さえ脅威になり得ると思ってきた。でもそのようなひとたちの人生や孤独、苦しみについてはあまり考えてこなかったし、ずっとただ嫌悪し断罪するような気持ちを持ってきた自分に気付いた。

無害の水性愛者と有害な小児性愛者。メインに描かれた欲は対象が水だったから美しかった。登場人物の心情が水の音や揺らぎとして表現されていたのも良かった。でも、もしも対象が児童だったら、どんな表現なるのだろう…血生臭い嗜好だったら?同じような気持ちで観れるのか?と視聴後はなんとなく向き合いたくない現実のその中心から外れたような印象を受けたが、そのあとでもずっと考えてしまう
原作はまだ読んでいないので、
機会があれば手に取りたいと思った。
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