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アアルトのyskのレビュー・感想・評価

アアルト(2020年製作の映画)
4.0
アアルトの人間性に焦点をあてた作品。
アアルトの建築作品、家具を目にすることは多いけど、その人物像はこれまで知らずにいた。この映画はそのアアルト夫妻の夫婦間のトーンや、同時代の建築家との交流が映し出されている。どのような環境や関係性のなかで、作品が生まれてきたのかがわかる。

夫婦間のトーンは複雑極まりない。でもこれが大きなことを成し遂げていくときのトーンなのかもしれない。自分ひとりでは抱えきれない文脈を相手にするときは、それ相応の重圧という呪いがかかる。それを解呪し続けたのがアイノなのかもしれない。アイノがいてくれるからこそアルヴァはあそこまで自由にいれたのだ。ひとつの価値観で断定することは絶対にできない複雑さがある。けれどもなんとかバランスをとっていたのだろうという気がする。


プライウッドはやっぱり接着剤とセットの技術。
木は本来、同じ樹種であったとしても、その繊維や水分量が育った環境によって変わる生きた材料だ。そのため腕のいい職人でなければ良い家具に加工していくのが難しかった。
それを解決したのがプライウッドという技術で、繊維も水分量による狂いも均等に均してしまうのだ。それにより工場による大量生産が可能になった。近代の文脈だ。
それでもアアルトは人間のもつ感覚に寄り添うデザインを考え続けた。それがプライウッドを使った曲げの技術なんだろう。
鉄とガラスとコンクリートだけではない。
木や土からなるレンガ、植物もアアルトにとっては重要なマテリアルだったことがわかる。
人間のもつ感覚に寄り添うデザインにも気を払いつつ、同時に近代化の文脈にも乗っていく。そのハイブリッドなデザインが私は好きだ。
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