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エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版のyskのレビュー・感想・評価

4.0
チチがひたすらかわいい。
あの小説家の部屋はオアシスのようにも思えたけれど、そうではなく度が過ぎる乾きというか潔癖というか執着のようなものの裏返しだったのかもしれない。
あの空間で住めるなら信頼できそうだ...と期待してしまったが裏切られてしまった。
ストーカーのようになる人はいつもそうだけど、自分と和解できていない人だよな。ああいう突付くと襲いかかってくるようなひとがいるから事故が絶えないのだ。寸前のところで逃げ切れてよかった。

結局悪いのはそこに追い詰めてくる都市的な生活なんだよな。みんなうまいこと順応しているように見えて、違和感を抱えつつ生きている。
小説家はその都市的な生活に全く馴染めない質で、だからこそ籠もってわずかばかりのオアシスをつくり、物書きをして世の中をひっくり返そうと思っていたのではないか。けれど実際は潤いも尽き、チチがオアシスに見えてしまった。その時点でもう都市に飲まれた側なのに、それを自覚していないという意味で自分と和解できていないんだよなきっと。
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