アリス

フェイブルマンズのアリスのネタバレレビュー・内容・結末

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

スピルバーグというとびっくりするようなSF大作!というイメージがあって、話題作を流行りに乗って観ることはあっても自分で観ることを選ぶことがあっただろうか。

激しく盛り上がるオーケストラの音、激しいアクション、巨大生物や未来や宇宙人、大団円のラスト、といった要素はこの映画にはないが、心を静かに動かす良い映画だと思った。

幼少期にThe Greatest Show on Earthを見て映像の世界に夢中になった少年サムが、いろいろ工夫して欲しい映像を撮ったり、それらをつなぎあわせて作品にしたり。
それが進化していくことにとてもわくわくした。
レコードをかけてその音楽の盛り上がりに映像の盛り上がりを合わせて編集するという閃きが素晴らしかった。
ボーイスカウトの役者に対して、自らも涙ぐみながら演出をするシーンがとても好きだった。
あそこまで感情を動かしながら撮られた映像だからこそ人の心を打つのだと思った。

一方で、複雑な家庭環境、愛ある家族なのに順風満帆とはいかない中、彼の『現実』と『芸術』のバランス、そして孤独が散りばめられている。
大伯父さんの呪いのような祝福のような言葉がとても印象的だったし、その後おかしくなっていく家族の歯車を予言しているかのようだった。
そしてユダヤ人という背景もとても大きなものなんだな…

また、映像をつくる側の功罪?みたいなものも現れていた。
映像は素晴らしい技術だが、撮らなければ(編集しなければ)母の真実に気づくことはなかったわけだし、Ditch Dayの映像で彼の編集によって被写体の意図しない結果になってしまったりもしたし、映像を扱うということのリスク?責任?みたいなのを感じられてよかった。

ラストシーン、久しく輝いていなかったサムの瞳が、フォード監督との謎かけのような会話で輝いたのがとてもよかった。

監督のwikiを見て、まだ観ていないスピルバーグ作品がたくさんあることに気づいたから、しばらくは家で見る映画にも困らなさそうだ。
アリス

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