まねきねこ

フェイブルマンズのまねきねこのレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
5.0
「スピルバーグ監督の自伝的作品」
このキャッチコピーを初めて見た時から、この作品は必ず名作になると確信した。まぜならこの物語は、誰も見たことがない、誰もが知っている物語だから。彼の作品から愛情を感じ取ったことがある人なら、この意味は分かると思う。
「フェイブルマンズ」は家族の物語であり、夫婦の物語であり、男の子の成長物語である。登場人物に誰一人として悪人は登場しないのだが、それでも壊れてしまう家族というものの脆さも描いている。母親の秘密を知ってしまったサミーは、母とどう向き合っていいのか分からずに冷たい態度をとってしまう。母はサミーに対して、どうしてそんな態度なのか理由を知りたいと言い、母の秘密を(不本意ながらも)映しとってしまったフィルムをサミーは母に見せる。この後サミーがとる態度には2通りあったと思う。母を軽蔑し、ひどい言葉をぶつけるか、それとも・・・ このシーンがサミーという人間を成長させ、決定付けた瞬間であり、スピルバーグ映画から伝わってくる愛情の正体だと感じた。
上映時間は2時間40分だが、体感として1時間30分くらいだった。サミー(スピルバーグ)がいよいよ、プロの映画監督という夢をかなえ、キャリアをスタートさせるという瞬間に物語は終わる。ここから先をもっと見せてくれ! そう思うのだが、それこそ誰もが知っている、映画史に燦然と輝く物語なんだと気付かされた。
「この物語を語らずに自分のキャリアを終えるなんて想像できない」と言うが、終わらないでくれ! と切に願わずにはいられない。