トシオ88

ハリガン氏の電話のトシオ88のレビュー・感想・評価

ハリガン氏の電話(2022年製作の映画)
3.7
冬の静謐な日常の中に、入り込んでくる非日常の恐怖。スティーブン・キング原作の短編がベースになっているそうだが、まだ未邦訳とのこと。
隠遁生活を送る大富豪ハリガン役のドナルド・サザーランドと少年グレイグ役のジェーデンマーテルとの本の朗読を通じて過ぎていく日常の肌理細かい描写が秀逸で、豪邸のクラシックな内装と冬の蒼い風景、そして落ち着いた伴奏も併せて沁みる。

そんな日常にスマートフォンが登場して、それまでの平穏な中に微妙にヒビが入っていく。富豪ハリガンはスマホの持つ意味と変わっていく世界を即座にグレイグに告げるけど、あれが登場した時、こんなふうに今の姿を当時予測できた人はどれだけいただろうか?

やがてハリガンは亡くなり、葬儀の時に流れるディケンズの名作「二都物語」の一節がシーンを引き立てる😢
そして…ハリガンの死後、起きる様々な怪異。
煽情的な描写でなく、どちらかというと地味で淡々と描かれる場面は、20世紀初頭の英国恐怖小説の一節みたいにひんやりとしていて、本作にマッチしている。冬の季節にぴったりなゴシックスリラーの良作だと思います🎬🤔
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