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山女のtdswordsworksのレビュー・感想・評価

山女(2022年製作の映画)
3.6
福永監督の『リベリアの白い血』『アイヌモシリ』に続く長編。『遠野物語』にも編まれた岩手県の早池峰山にまつわる民話から山岳信仰を取り上げ、村に居場所のない若い女が山を畏れ、拝み、山に分け入る話。
福永監督のこれまでの長編作品を観て、その優れた繊細かつ明瞭な人物描写に舌を巻く。『アイヌモシリ』では演技の素人が多かったためにその技量を計れなかったけれど、実力派の揃った本作では演技と映像が柔らかくも緊張感のある関係を見せていて、厳しい話の中に荘厳たる強さと優しさを感じた。
ただし、ストーリーテリングが巧くないのかよくわからないのだが、映画に欠くことのできない「驚き」が本作には決定的に欠如している。眠たい。真面目すぎるのだ。場面を追っていけば感動的な演出も視覚的な面白さも随所に見られるのだけど、よい「映像」を見せられているだけのように感じてしまうところがあった。

個人的には、僕はコロナ禍を迎えてごった返していた都心の公園を忌避して山に向かい、トレイルランニングを始めて、人間として生きる喜びを味わってきたのがこの2年間だったので、山女が感じた喜びに共感するところがあり、おもしろかった。
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