都部

ルパン三世 VS キャッツ・アイの都部のレビュー・感想・評価

1.6
令和の世に二大の作品を再定義する斬新な切り口も懐古趣味に媚びることで期待に応えることも出来ているとは言い難い本作は、80年代を舞台とすることでクロスオーバー作品の整合性をかろうじて取っているが、泥棒VS泥棒の旨味あるコンセプトを活かしているとは言い難いだろう。

この手のVSシリーズにしては珍しく明確に実力にも格にも差がある形態は珍しく、脚本の真相に沿う形でルパン三世を初めとするルパン一味が擬似的な保護者/メンターとしてキャッツアイを導く構図は面白い。しかしその構図の面白さを活かした展開には恵まれず、結果的にキャツアイが身の程知らずに無謀な案件に挑んでいるような"噛ませ"と感じる見せ方なのはよろしくない。誰かの不出来/失敗/手抜かりばかりで進展する物語ほど登場人物の格を下げるドラマはないだろうから。

ぎこちなさを覚えるCGによる作画は苦言を呈するほど醜態を晒しているわけではないが、声優の演技に動きが付いてこない場面が多くあり、令和の時代にも通用する華麗な泥棒達の活躍を描くそれとしては迫力不十分であると断定可能なものである。特に石川五右衛門の剣戟が酷い。

ルパン一味とキャツアイの面々が1:1の組み合わせとして掛け合いを交わす場面なども見られるが、そこにコラボの旨味を感じるような光るものはなく言葉騙しのようなお仕事感溢れる共演は作劇にさしたる影響を及ぼしてはいないように思える。ルパン三世と瞳の二人が本作では特にフューチャーされるが、後者のTVSPのヒロイン以下の立ち回りは仮にも往年の漫画の主人公としてはたしてどうなのだろう。

大筋の脚本に関しては可もなく不可もなくだが、あえてと言わんばかりにこの古臭さを感じさせる率直なプロットは『いつもの味』『知らない味』そのどちらかを満たしているわけでもなく、前述した不出来と感じられる要素がその物足りなさを明確な欠点として際立たてるという意味で総合的な作品評価も芳しいとは言えない。
都部

都部