大人は経験するほどに傷跡が増えていく。それはソフィがまざまざと物語っている。
ソフィは大人の扉を開きつつあるハイティーンを垣間見ては胸のざわつきを覚えるようになる。そんな娘を眩しそうに見る父は影を帯びており今にもいなくなってしまいそうな儚さがある。
そんな父の翳りも含め、旅の日々を二人はカメラを使って、二度と戻ることのできない全ての瞬間として残そうとする。
翻って、それがまだ記憶されているかどうかを確かめる今の気分はどんなものなのだろうか。
漠然とした記憶は『アフターサン』というタイトルそのもの。まばゆいだけでなく心のどこかで静かにきらめき、暖かく輝いている。
そして「Under Pressure」が私たちの奥底に眠っていた切なさを強く揺さぶり、それが押し寄せては溢れてくる。
観る人達の子供時代を想起させる懐かしい日々。
あの頃の父は一体、何を思っていたのだろうか。
あの頃の私は一体、何を思っていたのだろうか。