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aftersun/アフターサンのAPlaceInTheSunのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
5.0

両親が離縁した後に、父親と久々に行った夏休みのバカンスを、自分の記憶とVHSテープで辿る思い出の旅。

自分が子供だった頃の親の何気ない行動が、ふと大人になって思い出として思い起こされる時に、当時は気づけなかった、大人が抱える思いが今の自分には分かるような気がするってありませんか?
この映画の主人公はなぜ、どのような思いで父親との旅の記録を回想するのか。


■■■■■■あらすじ■■■■■■■
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。

11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。

テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
(映画.comより)
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【ネタバレ有り感想 書き込み中】

VHSのテープをセットして再生されるシーンから映画が始まる。カチャカチャという音が今はないビデオ機種を思い起こさせ懐かしい。
テレビ画面には大人の女性が反射し映っている。
ビデオテープに収められているのは、夏のヴァカンス。若い父親と、11歳の娘。

トルコのどこの海だか良く分からないのだが(エーゲ海)、風景は美しい。
ただ、序盤から死と性の匂いが立ち込めている。

ここでがっつりネタバレすると、このバカンスの(おそらくすぐ後に)カラムは亡くなってしまうのだ。自らの手で自分の人生を終わらせてしまうのだ。

ソフィが寝静まった後にベランダの柵に立ち、両手を広げて立つシーン、漆黒の深夜の海辺を一人で歩き、そのまま海に消えて行くシーン。作中にも何度か自死を示唆するシーンが登場する。
さらには前者のシーンでは直後に真っ青な空にパラグライダーが写し出される。自由に空を舞うパラグライダーと抑圧に絡め取られているカルムを対比するように。

そう、31歳のソフィが、20年前の31歳の父親を思いだす背景には父との死別による喪失が決定的にあるのだ。
ソフィは、なぜ自分を置いて行ってしまったのかと父親を責めたい思いや、父親が無意識に出していたSOSのサインに気づけなかった後悔や自責の念と共にずっと生きてきたのだ。

ここで、この映画には記憶媒体としてのビデオテープパートと、ソフィの記憶から補足した再現したパートの2つの構成要素があることを考える。
ビデオテープパートは一部で大部分は、大人になったソフィが父の記憶から再現して思い出している事になる。

今なら、ソフィは当時の父親の苦悩がわかるのだ。
ソフィの現代パートは、ほんの少ししか描写されないが、彼女を取り巻く環境が幾つも示唆される。言葉に頼らず。本当に卓越した映画だ。
ソフィは女性のパートナーと暮らしており子供を養っている。日常からあまり良く眠れないようだ。当時の父親の状況に



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☆☆☆☆☆アフターサンというのは日焼け後に塗る薬。 ソフィは言う「めちゃクチャ楽しかった日の後に、体がだるくなって何もしたくなる時があるの。パパにもわかる??」と。
ソフィもカラムと同じく鬱っぽい症状が既に出始めている。
だからこそ、アフターサンクリームというタイトルの意味が味わい深く残る。
暑い日差しの下でめちゃくちゃ楽しかった日の夜に父親が塗るクリームのように、鬱を癒やす行為と重なる。

☆☆☆☆☆☆☆☆
〜~ここで、劇中で何度か登場したクラブでカラムが踊るフラッシュバックのシーンが登場する。ここではこれまでより長く、画像は少しクリアだ。大人になったソフィと、あの31歳のカラムが何故か同時に存在している。カラムの表情は怯えている。生気がない。
次の瞬間、ソフィはカラムを抱きしめている。大人になったソフィにはカラムのなや

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「カモン・カモン」、「秘密の森の、その向こう」「ロストドーター」
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監督の父親との思い出で反映されているらしく、観る側にも個人的な体験を抉られるような感覚がある。端的に言えば刺さる人にはとことん刺さる作品といえよう。
自分自身の事を言うと、子供時代に親を見ていた視線と、
自分と子供の関係性も、この作品に共通するものがあり非常に重要な作品となった。
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