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aftersun/アフターサンのmimiminsuのネタバレレビュー・内容・結末

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

「アフターサン」見た!

離婚した父親の誕生日に合わせてトルコにバカンスに来た11歳の娘と父。幸せなバカンスの日々に時折挟まる不穏な空気が何かを予感させる…というお話。

端的に言うと「somewhere」のフリした鬱映画。この映画を簡単に要素分解すると

・全体の90%を占める幸せなバカンスの日々の描写

・カラオケを拒否するシーン、娘を残し夜の海に一人入っていくシーン、誕生日を祝うサプライズのシーン等で示唆される父親の不安定さ

・ストロボライトの閃くダンスフロアで錯乱したように蠢く父親と、彼にすがるよあに抱きつく成長した娘

・バカンスの幸せな日々から継ないで成長した娘が悪夢から目覚めるシーン

となっていて、上記の要素を繋ぐことで見えて来るのは、あぁ…この旅行の後父親は自殺したんだな…それが原因でソフィアは「これまでの人生で1番幸せなバカンスの日々」が大人になって以降も悪夢に見る程のトラウマとして焼きついているんだな。と言う事で、その前提で思い返すと、そう言えばソフィアは大して高くないシュノーケルのゴーグルを無くした事を「高いんでしょ」と気にしたり父親にハッキリ「お金が無いんだから」と言ったりこんな高級リゾートバカンスに来る感じの家の金銭感覚とちょっと違和感を感じさせる描写を重ねつつ、父親はクソ高価なトルコ絨毯を買ったり、ぼったくり写真撮影を快く受けたりと死ぬ前に有り金全部使うと考えるとピッタリな行動を繰り返してて…うぅ…辛い

そんな感じで、これから未来に向かっていく11歳の娘と自死を心に決めた中年男性の、お互い真逆に進む2人が最後の束の間交差したきらめく数日の記憶を瑞々しく描写する事で、全てが分かった後、そんな幸せな記憶が美しければ美しい程にその落差で悲壮感が増すと言う仕掛けの、良くできた鬱映画でした。

それにしても、説明過多になるとこの「落差」が出ないんである程度しょうがないんだけども、最近見ない割と観客を突き放した映画なんで「あんまり映画とか見ないけどA24話題だし抑えとこ」的なオシャレな若者はキョトンとするだけだと思うんで見る人は選びます。まぁ別にそれで良いんだけどね。分かんない経験って貴重だから。若者はいっぱいキョトンとしよう。それいい事だよ。
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