ふわふわとした余白のある描写で、観ている最中に自分が子供だった頃の記憶がフラッシュバックしてくる。カレーをつくるために具材を炒めている夕方の風景とか、小学生くらいの頃たまに親が喧嘩していたな、とか。
親子が中心の物語で弱々しく悩む父親が主題になる映画ははじめて観たように思う。父親のカラムが自分とちょうど同い歳で、それなのに11歳の子供がいるプレッシャーというのは想像もできないけど、自分の親も同じように苦悩していたのかなと思いを馳せる。映画と同様その苦悩は決してタッチできないけど、想像することで若い頃の親と同じ太陽を見上げることはできる。
テーブルや鏡(ニンジャの動きで手だけ映り込んでくるシーン)、ブラウン管テレビに映るカラムが印象的で、それ以外のシーンでも画面の隅に映っていることが多かった。その虚像的イメージが孤独で内なる葛藤を知り得ない父親像をつくりだしていたように思う。