Mina

aftersun/アフターサンのMinaのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.5
起きたこと、話したこと、目にした全てのこと、ただ事実の描写が在るだけなのにこんなにも愛しい、そして切ない。言葉や行動の節々に愛や思いやりが確かにあって、手で触れるんじゃないかというくらいに感じて、それを全部鮮明に思い出すことができるからこそ恋しい、忘れたくない。押し寄せる懐かしい気持ちも後悔も、何かを解決してくれるわけではないけれども、浸っていたい。あなたの横で決して楽しいだけじゃなかった夏の日に。そんな感情を映像で表現すると、こんなに美しい作品になるんだと知った。

どの時間軸で観ても、どの立場で観ようとも大切なものが見えてくる。

オールインクルーシブじゃないリゾートホテルでの時間、ツインじゃない部屋、11歳と30歳の親子、落としちゃいけなかったダイビングマスク、自分の思い出を話さない父親、歌の教室に通わせる余裕なんてないのにと返す辛辣な言葉。誰しもにある、あの時には分からなかった色々なもの。

でも同時に、補助ベッドとシングルベッド、自分の身の守り方を教える真剣な眼差し、日焼け止めを塗ってくれる手のひら、泥を塗りあう時間、誕生日を祝う歌(この時のカラムの映し方が凄かった)、これから起こるどんなことでも話していいんだよという言葉、最後の最後まで回し続けたビデオ。これもまた誰しもにどんな形であれある、淡くて優しい記憶。

きっとどっちも在ったからこそ、この映画は美しいし、たくさんの人の心に色々な思いを訴えるんだと思う。大切な映画。

【以下、映画の感想ではない日記】
私と知り合ってから映画を観るようになった恋人が、この映画をこれまで観た中でも突出して好きだと言ってくれた。自分に子供ができたとき、子供が成長したときにまた観たいと言ってくれた。より一層、この映画が大切な映画だと思えた。
Mina

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