映画というのは、ストーリーが分かりやすくて、キャラ付けがはっきりしていて、メッセージが強いものが必ずしも良いわけではない。結局は心に触れるかどうかだ。
そういう意味では、本作は何が描かれているのか把握するのが難しいにも関わらず、映画の魅力を振りまいている１本である。離れてしまった父娘がつかの間の再会をリゾート地で過ごす、だけの話ではないことは分かる。だが、どんな事実が隠されているのか、凝っている以上に不親切な作りだ。
大人になって過去のビデオを見ているのか、どれがビデオでどれが思い出なのか。ミュージックビデオ風な画作りが、現実と記憶の交錯を演出する。寝ている描写が印象的で、思いがけないシーンが挟まっているから、どこまでが夢なのか妄想なのか混乱してくる。
シーン合間の青い空とゆったりした時間、きっと何かを思い出したくなく、美化された思い出で覆い隠しているのだろう。
ミステリーではないが、不思議な感覚の新しい映画。手取り足取りなんでもかんでも説明してくれなくても、心に残るものがある。
