sakura

aftersun/アフターサンのsakuraのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
3.8
ポスターはじめ、作中のすべてのカット、そしてパンフレットまでも、すべての瞬間がいちいち最高すぎて、
最高すぎるからこそ、見終わったあと悲しくなってしまった自分がちゃんとこの作品を受け止めることができたのか心配になった。

でも、まあ考えれば考えるほど、パンフとかレビューとか読めば読むほど、悲しくなってよかったんだなとちょっと安心するし、
絵がバチバチにいいのに、のにというか、いいからこそ、美しい絵とその美しい絵で描かれている出来事の対比が完璧すぎて圧倒される。


自分の話をすれば、
わたしは離婚して子どもと住んでる側。ソフィの母親と同じ立場なので、夫婦としては離婚していたとしても、子どもの父親としてこんないいパパだったらなあ…🙄とかちょっと思っていた。

でも、その「こんないいパパ」が詳しい事情や理由は明かされないものの、けれど確実に崩れてゆく。壊れてしまっている明らかな、よくない感。

なんか、「いいパパ」でありたい気持ち・娘を愛する気持ちと、「いいパパ」と定義される条件はまったく別の問題なわけであって、
それはもちろん父親だけに限った話ではないし、離婚の有無や一緒に住んでいるかどうかは関係ない。
要するに、わたしもカラムとそこまで変わらないよなあと思い始めたら、なんかもうどんどん暗い気持ちになってしまった。
暗い気持ちになることは嫌いではない、むしろ好き


セリーヌ・シアマ監督の『秘密の森の、その向こう』、ディズニーの『私ときどきレッサーパンダ』の2作は、
各々の形で、娘がまだ子どもだったときの母親と対峙する。「お母さん」から、まるで「友達」のような視点へと、同じ人物を見る視点が移ることによって、母親も親である前にひとりの人間であること、母親にも今の自分と同じ頃があったことを知っていくし、観客にも訴えてくる。
これら2作は女同士じゃないとちょっと話が変なことになっちゃうんだけど、本作は女同士じゃないからこそ、家父長制とかフェミニズムとかそういう「抑圧されてきた/されている女性」という視点を排除して観ることになって、余計に親と子、人対人という「親子」について単純に考えることができたのかなと思う。
ほか2作に通ずるようでいて、最終的に残るものはまったく違う、というか。

これだけいろいろ考えてもすっきりしないというか、わかったと言えないし、どこかずっと分かりきれなさ、みたいなものが残る。個人的にはこれを、いい余韻だと今は思っている
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