このレビューはネタバレを含みます
父と娘が過ごすバカンス
を20年後、娘が改めて思い返す話
父親のことを考える
バカンスを素直に喜び今後のことを語る序盤、上手く振る舞えない自分に葛藤する中盤、今後の自分のために思い出をストックする終盤。
また、瞑想や太極拳の本があることから今の不安定な状況を立て直そうと努力をしている。しかし終盤、娘の行動により気持ちが乱され落ち込み次第にコントロールできなくなる。
終盤になるにつれて父は今回きり娘にもう会えないことを悟っている。だから自分のために思い出を残すことに尽力している。
半ば強引に娘と水球をする・ダンスに誘う、食い逃げをする程お金がないのに高額なラグを買う、有料のポラロイド撮影を依頼する(それを娘に見せない)、ラストの空港のシーンでは一度も顔を上げずひたすらカメラを覗いている。
その思い出の品々が20年後娘の部屋にあることから旅行の後の父が想像できる。
その思い出を以ても乗り越えられない出来事が父にあったと思うとやはり泣いてしまう。
ここから娘のことを想像する。
ビデオを見て旅行を改めて思い返す本作、娘は思い出を再構築して当時の父の気持ちを考え始める。
きっと親となって不安が残る中、なんでも話していいと言ってくれた父を思い出してビデオを見ているのではないだろうか…
ストロボのような表現はおそらく娘から見た父の解像度だと思う。
序盤はよく理解できずに遠くにいたが、最終日ダンスに興じる父は不安だったと悟れるほど近く感じている。
自分を見送った後は無表情でストロボの中へ消えていく父を想像する。
旅行の後、父との別離やセクシュアリティの悩みに直面するであろう娘は親になってこれからどうなっていくのか考えずにいられない。
未成熟ながらもずっと一緒にいたいと思わせてくれた父が心の支えになっていてほしいと思って仕方がない。
ここまで書き出すと、かなりヘヴィで暗く見えるのに作品は明るくて楽しい描写に満ちている。お互いにすれ違ったり傷ついたりしながらも思い合っている、でも少しの苦みがあるくらい。とても良い作品だった。