もこ

aftersun/アフターサンのもこのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
3.7
トルコのひなびたリゾートで夏を過ごす父と娘。彼らは兄妹にも見えるほど若い親子で、終始優しく穏やかに関係を紡いでいる。娘のソフィは子供らしさもありつつちょっと大人びたおすましさんという感じで大変可愛いが、全編に渡って父親に気を遣っている。それがいじらしい。しかし彼女がこぼしてしまった父親への無遠慮さが彼の闇へと繋がり、映画全体に不穏さを漂わせていた。父親は30歳にしてはやることが幼稚だが、決して娘を怒鳴らず、彼女を深く愛しているのが伝わる。繊細な父親と聡明な娘。この二人のやりとりは落ち着いているが時折背筋をヒヤリとさせ、観ている側を不安にさせる。
個人的に11歳の生々しいベロチューは見ていてかなり居心地が悪かった。リゾートといえば恋。「11歳のキッスなんてあり得ねえだろ!」とは思えないのがババアの倫理的な悩みどころ。でも一番あり得ないのは、11歳の娘をリゾートホテル内とはいえ放置してしまう父親だ。31歳、どこからどう見ても大人だが、同年代の私からしても彼は不安定で頼りない(その分優しいし反省もするけど)。
しかし、情けないことに、私もいまだに幼稚で大人になりきれていない。
事前に評判をきいてしまったので、勝手に「謎解き」の部分を期待してしまったのごいまいちノレない原因かも。
後から考えれば考えるほど切なく、勝手に重たくなる映画だが、美しい夏の景色や陽に透ける産毛、水の色、夏の夜などのワンシーンはとても綺麗だった。晩夏にもう一度見たくなる作品だった。
もこ

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