11歳のソフィ（フランキー・コリオ）は離れて暮らす31歳の父親カラム（ポール・メスカル）とトルコのリゾートホテルで休暇を過ごす。楽しい時間の中で、父親の密かな苦しみにソフィは気付かなかったが、20年が経ち、当時のビデオテープを眺めながら、大人になった彼女は父親との時間を振り返る。
当時のソフィ目線であろう、温かい親子の時間があまりに心地良く、その後のカラムのナーバスさ、“楽しまなきゃ” って強迫観念に駆られてるような映像とのギャップが辛かった。
全体的に、記録された事実とソフィの記憶と想像が組み合わされた作品で、そこら中にヒントやほのめかしが散りばめられて、解釈が観客に委ねられる部分が多かったように感じた。
そして、ポール・メスカルとフランキー・コリオの自然な演技の素晴らしさ！「ペーパームーン」級に心に残る親子だったなー。
以下、ネタバレあり。
無邪気さと思春期の戸惑いを抱えるソフィと、心の病に苦しみながら娘との時間を必死に楽しむカラムの対比は分かりやすく、そんな父親の想いを想像力で補いながら追体験しようとする、20年後のソフィの姿がなかなか捉えづらかったのも監督の計算かな。
ただ、間違いなく終盤の “Under Pressure” がすべてを物語ってて、あの場面には泣かされてしまった。
ソフィは恐らく亡くなっているであろう父親の苦悩を理解し、救えなかったことを後悔しているんだろう。
その上で、かけがえのない素晴らしかった時間を振り返って、“生きたい場所で生きろ、なりたい人間になれ、時間はある” という父親の言葉を、ビデオではなく頭で覚えていた彼女は、きっと自分らしく生きられているんだろうな。
