なんて無茶な旅を、ムサが力尽きてしまうのではとハラハラしながらの旅路。なぜそこまでして妻の遺体を故郷に連れ帰ろうとしたのか。
言葉がほとんどない孫娘のハリメ。その描く絵は美しく彼女の想いを映し出しているようだ。毛糸で作ったカーネーション。最後にささげた一輪の花に祖父と歩んだ彼女なりの思いが感じ取れた。
荒涼とした冬景色のトルコ南東部の景色は広大。
数少ない言葉だが、動きのひとつひとつから強固な思い、2人の心のつながりが伝わってきた。
現実は思い通りにはいかない、たどり着いた地、その向こうに広がる国境に向かう最後のムサに神が手を引いているように思えた。
今も続く紛争、戻れない故郷への思いを静かなロードムービーとして伝えている素晴らしい作品。