【第75回カンヌ映画祭 監督週間出品】
オーディアール『パリ13区』やデプレシャン『イスマエルの亡霊』などの脚本で知られるレア・ミシウス監督作品。カンヌ映画祭監督週間でプレミアされ、シッチェス映画祭コンペにも選出された。
冒頭から分かった。これ好きなやつ。映像が非常に凝っていて美しく、ファンタスティックな話ながら一本筋が通っている。アデルちゃんの演技も素晴らしい。
前半はどういう話なのか全く掴めない。少女が匂いを収集し、嗅ぐと異空間に飛ばされる。なにこれ?なんだけど、後半で飛ばされる世界がどういうことなのか分かっていくと俄然おもしろくなる。
黒人と白人というだけでなく同性愛という二層に重なった偏見に苦しめられる二人。そして母を取られるのではないかという不安が募っていく少女。ジュリアとの仲があるとはいえジョアンナは夫を愛していないわけではない。愛の曖昧さ、その揺らぎを繊細かつ大胆な描写で描いている。
去ったとはいえなくなったわけではない愛。しかしそこには怪しげな視線を送る別の少女が。
燃えるクリスマスツリー、道の真ん中に倒れた少女、ジョアンナとジミーの唐突な情事・・・インパクトのある映像が面白い。
まるで謎解きのように映像で見せていく手腕が見事。アデルちゃんのいつものふくれっ面のよく似合う演技も素晴らしい。ザ・ヨーロッパ映画であり、ファンタ系映画でもあるという好みドンピシャの作品だった。