まや

エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版のまやのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

大学生の頃からずっと気になっていて、何故かツタヤでずっと貸し出し中になっていて見れなかった作品を劇場でしかも4Kで見られるなんて!すごく感謝したい。

本当に素晴らしかった。出てくる女性の美しさ。それぞれ個性的で、着ている服装が本当におしゃれで可愛いし、芯が強い。それに加え、画面の中の構図の美しさと光と影の使い方や人物配置の仕方がうっとりするくらい美しい。モーリーとチチが夜のプールでピクニックするシーンと喧嘩後の朝に会社で会うシーンが美しすぎてそのカットがすごく心に残る作品だった。(後半顔がシルエットになって行くところも凄く良い。すごく洗練されて行く感じがした)

90年代の台北の若者たちの群像劇。そこには恋愛観も将来観も生き方もそれぞれバラバラな男女が映し出される。その男女の関係が構築される中で、自分の求めるもの、それが何であるかを徐々に自分の中で答えを出していく物語であった。

とにかく会話の量が多くてそれぞれの人物形成が素晴らしかった。人は社会の中で生きているけどみんな違う人間で、違う考えを持っている。それでもなお、人との繋がりの中で生きていくことの難しさともどかしさ、折り合いの付け方全てが映し出されていたように思う。

本当に相手を大事に思っていたとしても人はどうしても傷つけ合う生き物なのかなと思った。傷つけ合いながら関わり合うことで初めて愛が生まれるのかなと。それは男女問わず、どんな人とであっても。そんな人間そのものが映し出されていてとても好きな作品だった。劇場で観られてほんとに良かった。

最後のチチとミンのエレベーターシーンすごく良かったし、涙が出た。お互いに一度はエレベーターを閉じてお別れするが、その数秒後思い立って追いかけようとしたチチと、同じタイミングで追いかけようとするミン。また2人で歩む決意を2人で同じタイミングでできたとき、それは本当の繋がりへと愛情へと変わっていくのかもしれない。すごく大好きな終わり方だった。


2023.10.29 2回目鑑賞。

最初に見た時は登場人物たちの設定や関係性を追うことにも集中していたが、2回目なのでそこは把握できているのでより物語に集中して観られた。

前半は登場人物たちの関係性や、キャラクターを強く描いていて、後半はその関係性の変化や登場人物たち自身の変化が彼らの関係性の中で描かれているように思えた。

後半、登場人物たちがシルエットとなり、表情が見えなくなる美しさは何度見ても良い。後半の畳み掛けがすごく面白かったし、ずっと号泣していた。特にチチと作家のシーンで、心理に触れ、そこでチチの顔が明るくなり、スッキリした顔で、モーリーに会いに行くのが良かった。朝のモーリーとチチのシーンも最高。みんな本心でなく何かのフリで生きていて、それは本心丸出しで生きていたら傷ついてしまうから。そんな登場人物たちが傷つきながらも生きていく様にとても涙が出た。(勿論最後のエレベーターのシーンも号泣だった)

ただ、アキンだけはずっと本心で生きているフリが下手な人間だからこそ、自分の求めるものに出会えたのかと思った。生きているだけで良くて、誠実に、傷つくことを恐れないで生きていきたい。とても人生そのものを肯定された気がした。本当に嫌なことが重なっていたので、すごく救われたしやはり大好きな作品だ。
まや

まや