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セカンド・チャンスのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

セカンド・チャンス(2022年製作の映画)
3.1
【防弾チョッキを生み出した男】
『ザ・ホワイトタイガー』、『華氏451(2018)』のラミン・バーラニ監督がCPH:DOXにドキュメンタリー映画を出品していた。防弾チョッキを発明した男の人生を追った作品とのことですが果たして…

リチャード・デイビスは、自分の腹にマグナムをぶちかます。しかし、彼は生きていた。そう彼の作った防弾チョッキがデイビスを守ったのだ。自作の防弾チョッキを自ら試すパフォーマンスで警察や軍に売り込みを行ったこの男リチャード・デイビスは、Second Chance Body Armor Companyを設立し、町の人をほとんど雇う成長を魅せた。おばちゃんが銃を撃ちながら宣伝する強烈さ、華やかなアメリカンドリームが激しく語られていく。銃マニアであるリチャード・デイビスは自作のホームビデオを作ったり、広大な敷地で銃をぶっ放したりして子どもがそのまま大人になってしまったような男であり、彼のフッテージはどれも強烈なものがある。

そんな彼のエピソードの一つにピザの配達中に襲われた話がある。映画はこのエピソードに目をつけた。すると、警察の記録にこのような事件がなかったことが明らかとなる。また、彼が経営するピザ屋が放火される事件があったのだが、その一週間前に保険に加入していたことも突き止める。そこから、リチャード・デイビスのビジネスとしてのハッタリが垣間見えてくる。ビジネス戦略として時に嘘をつき、時に聖人として振る舞い、時に近所の少年を演じていることがわかってくるのである。

そして彼の絶頂と転落が語られてくる。9.11をきっかけに大きな成功を手にした彼はより薄くて強い素材を見つけビジネスを発展させていくのだが、その材質には問題があったのだ。その問題を解決できる能力があるにもかかわらず、彼は止めることなく突き進んでいくのであった。

このアメリカを象徴するような、ビジネスが持つ矛盾した側面の物語はマーティン・スコセッシが映画化したら面白そうな程壮絶な人生譚となっている。恐ろしくも魅惑の物語であった。
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