Monsieurおむすび

理想郷のMonsieurおむすびのネタバレレビュー・内容・結末

理想郷(2022年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

東京国際映画祭にて。

スペインのガリシア地方山間部の豊かな土壌に魅了され移住したフランス人農家夫婦と、よそ者を受け入れない隣人兄弟の確執を描いたスリラー。

夢を抱いて人生の重大な選択をした夫婦が執拗に嫌がらせを受ける過程がひたすら辛く、見てるだけで精神的に疲弊してしまう。それ故に見逃しがちだが、過疎化する村社会に生まれてから数十年縛られて生きてきた兄弟の悲哀もやるせない。

貧困や家系に起因する選択肢の無さ、教養の無さ、少し外に目を向ければ自分よりも幸せな人が溢れている事への鬱屈や自分の領域に侵入してくる異質への怒り...。
それらが次第に輪郭を帯びてくる演出の上手さがこちらの心境を複雑にしていく。
そんななかでも夫を殺され1人残されたオルガが示す尊厳や犯人兄弟をずっと野放しにしてきた老婆への毅然とした行動が、本作をただの暴力映画で終わらせず良いあと味になっていた。
人間の暮らしと結びつきの強い種類とはいえ、登場する動物がどれも従順なのも示唆的で印象的だった。

フランス人夫婦役のドゥニ・メノーシェ、マリーナ・フォイス
地元の異常者兄弟役 ルイス・サエラ、フェデリコ・ペレス・レイの演技が四者四様で素晴らしく圧倒されっぱなし。
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