▶︎まだお嫁に行きたくないの。だから二人で仲良くしましょうよ。でもお母さん。本当に好きなひとができたら別よ。春は永いほうがいいもの。
▶︎さびしいいったってしょうがないわよ。
我慢しなきゃ。そんなもんよ親子って。
▶︎家柄より本人よ。初めから落第よ。
▶︎愛せるの? いつまでも 永久にだよ?
確か『晩春』(1949)では原節子がよそへ嫁ごうとしない娘役だった。今回見た『秋日和』(1960)は「まだお嫁に行きたくないの。だから二人で仲良くしましょうよ」と言う娘をもつ母親役をしている。この女優さんは作品の中でいくつの人生を味わったのだろう。物語の親子を夢見ることと実際その役を演じることは視点も考え方も違うだろうから、スクリーン越しの自分のほうが現実より現実味を帯びていると感じるんじゃないかと思った。何度も出演する他の俳優さんもしかり。小津映画は恐れ多くてのほほんと(立て続けに)見ていられない。