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aftersun/アフターサンのSのネタバレレビュー・内容・結末

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

五十嵐監督の『SUPER HAPPY FOREVER』とともに言及される作品『Aftersun』。アマプラで見たものの映画館で観れなかったことが悔やまれるほど良かった。
カタルシスに繋がらない死の描き方はスパハピと同じだが、アフターサンは父子という、年代も関心ごともまっまく異なる者の対照的な視点があって(無気力に苛まれる父と、無邪気な活力にあふれる娘)、そこには似た者同士の関係性より残酷で切実なものがあった。

悪夢に飲み込まれてゆく父の憂鬱に勘づくにはあまりに幼かった11歳、当時のことをソフィは回想する。今となって分かることがこんなにたくさん。将来何になりたかったかの質問に答えない父、太極拳や瞑想に関する本を好んでいた父、真剣な眼差しで護身術を教える父、故郷には居場所がないとつぶやく父、好きな曲を歌うこと拒む父。同じ空の下、太陽を浴びている時でさえ、父は生を拒んでいたのだろうか。それほど悲しかったのだろうか。

演出においては、目や口より手と背中を重んじるようなシーン、大きな手と背中を慈しむシーンが印象的だった。なにより最後の、自決したかのように自ら進んで扉を開けるシーンは、大きな選択をした父を誇らしいと感じてる娘の視線を思わせる。別れの悲しさより、存在そのものの誇らしさが残る終わり方だった。
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