ご機嫌な黄色

父は憶えているのご機嫌な黄色のレビュー・感想・評価

父は憶えている(2022年製作の映画)
4.5
監督作品を鑑賞するのは初めてでした😊
三部作の三つめらしいのですが、特に障りなく単体で堪能出来たと思っています

骨のような白色の根が這う木立
男は不注意に倒してしまった鉢植えの花を大事そうに土ごと手に掬い、少女に託す

天山山脈を臨むキルギスの集落に、
ロシアへ出稼ぎに出たきり、23年振りに息子に発見された父ザールクは、記憶と言葉を失って戻って来た
無言で、無表情で父は、染み付いた行動なのだろうか、ゴミを拾い続ける
故郷を汚し困らせるゴミをひたすら拾う
辛かった思い出や、未来に続きかねない哀しみも、拾う
忘れたくないあの頃にであうべく、拾う
拾っても、大地に還らないゴミなんてずっと無かったのだ、処理場はなく山となるだけ
家族と村人達をロングショットを多用して映す現代の問題と未来への希望

淡々としておりますが無言故の可笑しみもあり、興味深い生活描写と温かみと緊張を備えた‘見守り’は退屈しませんでした


知り合った80overマダムらが言っていたことを思い出す
「年取ったら楽しかった思い出が大事になるから沢山楽しい思い出作っておいた方が良いわよ😊」って


日本と同じケンケンパ
もてなしはサモワールを使う紅茶と形様々なパン
乾燥した空気に流れるアザーンと『私の記憶』が美しい

思い出と未来に色を塗り、
春が来る



以下、公式サイトより監督のメッセージをそのまま載せます

「本作は人間の愚かさを描いています。記憶を失った主人公は、人間性の悲劇のメタファーです。彼はリトマス試験紙のような存在で、道徳の指標でもあります。若い家族の奔放な感情、プライド、女性に対する虐待、人々の間の憎しみ、イスラム教の過激化、汚職、大気汚染、大量のゴミで台無しにされた環境、このドラマチックな物語において、「愛」は理性を取り戻すための儚い希望のようなものです。
歴史的記憶や自らのルーツ、精神的価値観を失った人々が、この冷酷な世界で道徳が守られるかどうかについて語るひとつの試みなのです。」
ご機嫌な黄色

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