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春に散るのmitoのレビュー・感想・評価

春に散る(2023年製作の映画)
3.6
2023年94本目。
渡米など、華々しい経歴を持つ老年の元ボクサー広岡と若きボクサー黒木翔吾の師弟関係を描いたスポ根映画。

瀬々敬久監督作品。
尽く合わない瀬々作品…なのに何で観に行った、というツッコミはさておき。
個人的に初めてポジティブな感想が勝る瀬々映画だった。

瀬々さんが苦手な理由は邦画特有の、あざとい程の過度な説明セリフや過剰な感情表現演技が盛り沢山なところ。

泣かせるところは登場人物が感情爆発させて号泣して抱き合うし、
ガスが切れれば「ガスが切れたー!!」と大声で説明してくれる(64後編、最大の爆笑ポイント)

この作品も決して、そういう場面や演出が無い訳じゃないんだけど。
他の瀬々作品に比べると大分落ち着いたトーンで展開し、過度な演出とかなり少なく、いつもの不快感が殆ど無い。
話も和製ミリオンダラー・ベイビーのような話でボクシングへの情熱と、その先の悲劇性の調和が良い塩梅で胸を熱くさせた。

スポ根というジャンルが瀬々作品特有のあざとさとマッチしていて、不快感を緩和するという相乗効果が生まれている。
寧ろあざとい展開の方が熱い展開になって上手く機能している感がある。

役者陣もベテラン勢、若手勢共にちゃんと映画してるし、いつもの瀬々作品の「演技の上手い役者も下手に見える」お遊戯感を感じさせない。
(ヨギーだけ、演技は上手いんだけど、ヨギーという存在故に、つい口角が緩んでしまった)

ラストだけ、どう譲歩しても「あ、いつもの瀬々敬久だ」と思わせた場面があったがそれ以外は、想像以上に楽しませてもらえた。

因みにそのシーンは、ラストの桜の下のシーン。
そこまでハッキリと「逝きました」と表現しなくても良いだろ(笑)
別に、桜の樹に項垂れながら身体を預ける後ろ姿だけで観客も理解出来るし、情緒あるだろう…。
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