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ホワイト・ドッグの一人旅のレビュー・感想・評価

ホワイト・ドッグ(1981年製作の映画)
5.0
サミュエル・フラー監督作。

フランスの作家ロマン・ガリーによる1970年発表の同名小説を鬼才サミュエル・フラーが映画化したサスペンス映画で、黒人を襲うよう調教された犬を巡る人々の闘いを描きます。

人種差別主義者によって黒人を襲うよう調教された白いシェパードの雄犬と、彼を正常な状態に戻そうと調教し直す熟練の動物訓練士、そして迷い犬だったシェパード犬を保護して愛情を注ぐ女優の卵の挑戦を描いた“動物サスペンス”の力作となっています。

黒人を襲う犬=“ホワイト・ドッグ”に仕立て上げられた一頭のシェパード犬を巡る善良な人々の努力とその結果を描いた異色サスペンスで、黒人を襲わないように調教し直そうとするもそう簡単には洗脳が解けずに黒人を襲い続けるシェパード犬の暴走が今なお続く現代アメリカ社会における人種差別の根深さを物語っています。また、ホワイト・ドッグの飼い主である白人の男の登場が狂犬の陰に隠れて存在する罪深き人間の悪意を不気味に浮かび上がらせています。

『クジョー』(1983)のように人を襲う狂犬を題材とした作品ですが、物語の背景にある人種差別の実態が社会派な味わいを多分に付与しています。シェパード犬の芸達者な演技も必見の犬映画です(良く見ると本気噛みではなく“甘噛み”なのが余計に可愛い)。
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