都部

ほの蒼き瞳の都部のレビュー・感想・評価

ほの蒼き瞳(2022年製作の映画)
3.4
やや古典的ではあるが驚きの真相と納得の結末が保証されたヒューマンミステリーとしては過不足なく、冬季を迎えて雪が降り注ぐウエストポイントで交わされる不可解な死の惨状は知的好奇心を擽るに相応しい。

クリスチャン・ベールとハリー・メリングによる二人の根本的な演技力の高さが発揮された語り部達が織り成す掛け合いも塩梅よく、陰鬱とした重く苦しい雰囲気が形成される本作の邪魔にならない程度に物語に賑やかさを演出している。

閉鎖的な僻地で繰り返される悪魔崇拝的な惨劇が齎す張り詰めた緊迫感は海外の文化圏特有のものを感じさせるが、ゴシック調で統一された建築物や白色に染まる自然の撮り方はひたすに格調高く、そうした画としての説得力を帯びた映像がその雰囲気作りに一役買っている。

古典的な推理劇としての装いが立派であるためか、事件捜査の推移はやや淡々としており、繊細さや重厚感を受け取るにも限度があると言いたくなるが尺としては丁度よく、衝撃の結末までの道程の尺は決して長くなくむしろ最適化されている。真相に位置する終盤の展開は言葉足らずさを引き起こすほどの語り部の繊細さが肝として機能するもので、真相を知った上で演技を楽しむという意味では二度楽しめる映画とも言えるかも。

作品で大きな意味を成す悪魔崇拝の儀式的場面の撮り方が単調かつ無個性過ぎるのは考えもので、年齢指定による表現の幅が心臓を抜き取るという行為のおぞましさを表現出来ていないのは残念か。
そうした派手さとは無縁の堅実なミステリーだが、映画としては及第点を維持しており出来は決して悪くない。
都部

都部