ちら

猿の惑星/キングダムのちらのネタバレレビュー・内容・結末

猿の惑星/キングダム(2024年製作の映画)
2.4

このレビューはネタバレを含みます

人間と類人猿の分岐点とされる"葬儀"をエイブが行うシーンから始まり、部族の習慣や、しきたり、家畜との営みを描き、正しく猿の惑星の到来を予感させる最高の映画になると思っていたら…。

前三部作における最大の要素である、人間とエイブを天秤にかけ良心を揺さぶり、平均台の上を歩かされる様な緊迫感のある雰囲気は、今作では、エイブに重きをおいてたため跡形もなく払底されていた。人間(野生化した)の営みは全くと言っていいほど描写されず蔑ろにされており、物語の奥行きが感じられなかった。

物語のキーとなるキャラクター達も、思想や個性、また映画のカタルシスを彩る心的成長が全く見られず、ある意味2次元的な脚本家の操り人形のようにしか見えなかった。

百歩譲って物語を進めるための舞台装置としての役割に徹するなら、まだ理解はできるが、それを見積もっても主要キャラの行動原理が意味不明すぎる。

大きな使命と責任を背負ってそうなノヴァは、後先考えずに行動し、エイブたちの眼の前でコミュニティで唯一の人間を絞殺し海に投げ捨て、夜明けが近いのにも関わらず危険な断崖絶壁をよじ登り、猿なら誰でも見付けられそうな位置にデカデカと空いてる換気扇から侵入するというアホすぎる計画を実行し、挙句の果てには白昼堂々扉を開き、命からがら成した行為が人類の命運を握るカセット(?)一本盗み出して防波堤を決壊させるだけ…。
突っ込んではいけない部分だが、内部の破壊工作全くせずに水没頼みって運任せすぎやしないか?現にエイブの首領は水没から逃れられてるし「何もかも渡しやしない」というジャイアンマインドの割には、上の階層に残った武器等は盗まれてもOKってことなんですか?
結果的に命運カセット(衛星通信の為に必要だったとしか思えない謎オブジェクト)渡せてハッピーエンド的な流れになってますけど、私だったら、こんな破天荒な人に人類の命運託せ無い。

ノアも、意味不明。最後に「学んだ事を糧に村を立て直す」と大それた事を宣言していたが、結果的にこの度であなたが学んだ事はなんですか?人間との共存?いやいや、何のためらいもなく人を殺し、仲間の身を危険にさらす防波堤の決壊を実行した張本人の眼の前でそんな事言えないですよね。
伝説シーザーに感化されてエイブの結束?いやいや、あなた完全ホーム状態の決闘で、取り押さえて拘束することもできたにも関わらず、父親の形見の鳥危険に晒し酷使して首領殺しちゃてますやん…。
エイブの科学技術に於いても、武器を直したとは言いつつ描かれるのは導火線をくるくる回して繋ぎ止めるといった、子供騙しの様な粗末な代物…そもそも、エイブにあのスタン棒を作り出せる知能があるか甚だ疑問である。
電気を操れるなら松明なんてものは不要であり、ガジェットと文明水準の明らかな差異に大きな違和感を感じる。

結果、あの旅で学んだ事は、誰も信用するな、推定有罪、疑わしきは○せ、といった皮肉にも人間的な考えに基づいた負の論理じゃないでしょうか。
まぁ、それは言いすぎですけど、あの場でノヴァを見過ごすのは甘すぎる気がします。言動が支離滅裂です。

首領も全くカリスマ性無し、着飾ってるだけの成金にしか見えませんでした。なぜあの立ち位置にいれるのか全く分かりません、シーザの神権を借りるならもう少し宗教的側面を見せてほしかったですし、帝国の町並み風土、周辺技術などを描く素振りも見せずただ、一辺倒に猿を酷使するだけ…。扉を開くにもマンパワーの考えしか持たない脳筋。なにが素晴らしい日だ、毎日そう叫んで扉開こうとしてるのか…?

書き出したらきりがないのでこの辺で終わりにますが、内容は全体的にスカスカで何の捻りもなく、描かれたテーマも見せかけだけのハリボテにしか見えませんでした(ノア、洪水、導く方舟、安直すぎませんか?乗ってんの猿だけかい人間はどうした…)。本当に残念です。

最初の10分位が最高潮の見せ場です。
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