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そして、ひと粒のひかりの一人旅のレビュー・感想・評価

そして、ひと粒のひかり(2004年製作の映画)
5.0
ジョシュア・マーストン監督作。

麻薬の運び屋となったコロンビア人少女の運命を描いたサスペンス。

本作が映画初主演となったコロンビア・ボゴタ出身:カタリーナ・サンディノ・モレノがベルリン映画祭女優賞を受賞したアメリカ/コロンビア合作による“社会派+少女奮闘サスペンス”で、コロンビアの田舎町で家族と暮らしている17歳の少女:マリアが知人からの誘いを受けて、麻薬を胃に詰めてアメリカまで密輸する運び屋となる姿を描いています。

妊娠中のヒロインが生活苦を理由に麻薬の運び屋となるものの、いくつものトラブルと危険が彼女を待ち受けていて―というサスペンスフルな物語で、麻薬を詰めた親指大の包装を数十個も呑み込んだ上で、南米コロンビアからアメリカ・ニューヨークへの麻薬密輸に手を染めるヒロインの運命を見つめています。

南米における貧困や麻薬の蔓延を背景にした社会派サスペンスで、麻薬組織が実際に用いる―“麻薬を胃に詰めて密輸する方法”が生々しく詳細に描かれています。麻薬の前に葡萄の粒を呑み込む練習をする光景や、「胃の中で包装が破裂したら死ぬ」という先輩運び屋の恐ろしい言葉、麻薬を掠めたら家族に危害が及ぶことを匂わせた元締めの警告、さらには密輸先のアメリカで麻薬の受取り相手によって監禁された状態で数十個の包装を“排出する”光景等、薔薇農場を辞めて一転、麻薬の運び屋となったヒロインが初体験する不安と緊張と恐怖の日常をリアルに映し出しています。

南米から北米への麻薬密輸の実態をその一端を担うコロンビア人少女の視点により暴き出した衝撃作で、身重の少女が下す最後の決断には、貧しい人間が貧しさから抜け出せない現代のコロンビア社会に対する失望と訣別の念が顕著に表れています。
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