『国家が破産する日』『モガディシュ』など、政治・社会への批評性とすぐれたエンタメ性を高い水準で融合させてきた韓国映画の、新たな佳作。
前述のようなドラマティックな作品群とは一線を画し、詩情すら感じさせる本作は、直視しがたい悲劇をも落ち着いたトーンで、静謐さのなかで描く。
重たいが、うつくしい映画だった。
専門学校と大企業の下請け・孫受け企業が結託し、「実習」という名のもとに高校生たちを使い潰すあるまじきシステム。
誰かの人間性が奪われるようなことが起こっても、企業や、学校や、親や関わる誰もが「知らなかった」と見なかったことにするようすは、資本や労働の原理を共有する国や社会であれば、いつ・どこでも(もちろん日本でも)「あるある」だろう。
経済的困窮など、「仕方ない」と言いたくなるような事情も、加害者と呼ばれる側にしてみればきっとある。
しかし、未来ある若者たちから奪われたものがいかに輝かしいものだったか。
どんなに常態化しそれが「ふつう」になってしまっていたとしても、やはり越えてはいけない一線を越えてしまっているのだということを、ラスト数分のソヒの瑞々しいすがたが語ってくれている。