「愛しい物語」W主演のスネオヘアーさんの舞台挨拶での言葉です。この10年余りは誰しも「愛しいもの」を奪われたり失う事もあったのではと想いが馳せました。
演じた主人公の「大場嘉門」はまさに最愛の妻を失って5年。未だその面影を追って日光の美しい街をカメラを片手にさすらう日々です。嘉門の経営している、日光に実在する「本宮カフェ」を中心に物語は繰り広げられます。嘉門と残された娘達をそっと見守る、口の悪い(笑)近所の仲間達。嘉門の父の事もよく知っていて、我が子のように頭を撫でたり、叩いたり(笑)見守る輪王寺門跡にこの作品が遺作となった宝田明氏。
病状を押しての宝田明氏の多彩な演技に胸が一杯になります。
特に嘉門との掛け合いが秀逸です。
ミュージシャンのはずのスネオヘアーさんが、俳優として、座長として、みるみる輝き出す魔法。
スターとは自分の輝きで周囲を照らす存在なのだなと思いました。日本の映画界のスターの力を知りました。
改めて心からご冥福をお祈りいたします。
その姿と光を余すこと無く映画に納める技術。カメラを長く回し続ける事で、その輝きを演技を越えた日常に閉じ込めてしまいました。小津監督の東京物語みたいなのでは。
奇跡みたいでした。
五藤利弘監督とはそういう方なのでしょう。
そんなある日、偶然見掛けた、晩秋の中禅寺湖に佇む女性が、亡くなった妻の姿と重なり、彼女の願いを叶えようと、家族と仲間達と共に寄り添う人情劇。
現代の寅さんみたいです。
嘉門が、妻を失った悲しみに暮れる中でも、花の名前を持つ二人の嘉門の娘達が健やかで愛らしく元気に育ったのは嘉門の子供達への愛の力だと思うと更に悲しみが募ります。
花の名前を娘達に名付けたのです。嘉門夫妻の愛情の深さを感じずにはいられません。
それでも、愛が全てと言っても。愛するだけでは。愛されるだけでは。
必要とされて。必要として。得る信頼。
悲しみが深くてつい忘れてしまう周囲からの信頼。
人を助けることで嘉門が思い出し、笑顔を取り戻して行く愛しい物語。
黒ばかり着ていた嘉門の衣類が終わりの頃には明るい色彩に。花の色に。
日光の景色が悲しみで美しく微笑みで暖かく輝く物語でした。鑑賞後、何度も映画のロケ地を訪れてしまう程の美しさと懐かしい感じです。
よくある話しなのかもしれません。
でもこの想いは当事者にしかわからない。
深い共感を呼びます。
みんなが「愛しい物語」を取り戻せる様に祈りたくなるお話でした。
沢山の映画のパロディーが散りばめられています。
まるで監督からの謎なぞです(笑)映画の知識を試されます(笑)
鑑賞後の感想をブログに書かれている人からの情報に驚きました(笑)
更に美しい深い物語が広がります。
いくつ見つけられましたか?私は中々(笑)是非、教えて下さい。