さよこ

To Leslie トゥ・レスリーのさよこのレビュー・感想・評価

To Leslie トゥ・レスリー(2022年製作の映画)
4.2
【ダメな主人公と、見捨てない周囲の優しさ】
貧困で苦しむシングルマザーが宝くじの当選によってハッピーになる話かと思ったらちょっと違った。

🍺全体の感想
この手の主人公は好きになれないことが多いんだけど、不思議と嫌いになれなかった。やることなすことドン引きなんだけどね…なんやかんやでめっちゃ泣いた😢

🍺教養と人間性
お金だけ手に入れても教養がなければすぐ🦆にされちゃうし、いくら言葉で愛してると言っても行動が伴わなければ家族だって離れていく。

🍺ヤングケアラーの回避
息子の行動がどれも『母親から自分を守るための行動』で泣けてきた。自分の住んでる街を母親に紹介してる姿は健気で泣けるし、それに対する母親の興味のなさがつらい。母親のいう愛はほんとにただの''お気持ち表明''で、行動が伴っていないから痛々しい。こうやって家族とか愛とかっていう呪いの言葉に縛られている子どもは世の中にたくさんいるんだろうなぁ…。

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⚠️この先、ネタバレあります⚠️
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🍺主人公の生い立ち
謝らない、感謝しない、手癖が悪い。
そのくせ逃げグセがついてるので都合が悪くなると問題をうやむやにしてどこかに行き、ほとぼりが冷めたらふらっと戻ってくる。あまり話題には出てこなかったが、主人公の両親はとても厳格な躾をしていたっぽいし、絶対権力者である両親に逆らうこともできず、唯一の対抗手段が実家と決別する(逃げる)というものだったのかもしれない。そして息子は祖父母と普通に連絡とっているので、主人公の両親に大きな問題があるというよりは、主人公と絶望的に相性が良くなかっただけな気がする。

🍺更生への道
主人公の後先考えられない短絡的な性格もさることながら、地元や周囲のみんなが良かれと思ってやったことが却って更生の道から遠ざけてしまったのではと思った。この人は息子を○○した時点で逮捕されたほうがよっぽど更生の近道だったんじゃないかな。そのほうが衣食住が保証されて、グループワークで自分と似た境遇の仲間ができて、且つ強制的にアルコール依存からも脱却できる。何が最善かは分からないけど、もっと福祉を頼っても良いのにな。

🍺印象に残った台詞
『愛してくれたらそれでいいよ』
母親に届いていなかったのが切なくてつらい。

🍺お似合いの二人
ホテルのおじさんが主人公のことを放っておけないまでは良い人だな〜と思ったけど、どこに惚れる要素あったのか分からなくて、最終的に『情緒不安定な彼女』と『理解ある彼くん』という構図に行き着いた。主人公が自立するためには初期サポートは必要不可欠ではあるけど、結局主人公は最後まで誰かの善意におんぶにだっこ状態(そして主人公は彼らに指図までする)なので、いわゆる''自立''とはちょっと違うなぁと思ったり。けど、こういう持ちつ持たれつな関係が人間らしさでもあるので、自分の不寛容さが浮き彫りになった作品だった。

🍺息子との再会
きっと息子はあれからずっと罪悪感でいっぱいだったと思うし、母親の助けになれない無力な自分に不甲斐なさを感じていたと思う。だから母親の知人を通じて近況を聞いていたと思うし。ただ自分だったら、久しぶりに再会した母親が子どもを差し置いて彼氏と仲良くお店を開業していたと分かったら発狂しちゃうと思う。え???俺の罪悪感返して??てなっちゃうな😇

🍺和解の瞬間
ラストはめちゃ泣いたんだけど、ふと我に返ると結局ナンシーから歩み寄ってるし、息子にも無意味な愛を伝えるだけで全然謝ってないんだよね。これで一件落着というにはみんな主人公に甘すぎな気がする。ナンシーが例の件は絶対許すことはないと宣言してくれてたのがせめてもの救い。

🍺その他、いろいろ
・ベッドシーンがない洋画は久しぶり🫶
・お財布出すフリする見栄っ張り
・親子の感動の再会にしゃしゃりでるおじさん
・目の前の幸運に気付かないヤツもいるんだな
・地元の男には抱かせないポリシー持ってそう
・DQNの被害者面がすぎる
・昔のVTR見せるとか荒療治がすぎる
・明らかにドラッグな見た目を演技でできるの凄い
・周りに人がいないのは自分のせい。

***

周りの噂なんて全部嘘なんだから何も聞かなくていいのよ。ママはあなたのこと愛しているの。

ナンシーの優しさ、凄いことだよ。
さよこ

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