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ナイン・マンスのmarikabraunのレビュー・感想・評価

ナイン・マンス(1976年製作の映画)
4.5
70年代の女性映画として私の中で外せないひとつになった。初っ端から面白すぎて口角が緩む。食事の誘いをきっぱりと断られているにも関わらず教えてもいない家の前で勝手に待ち伏せて「俺だ」じゃないんだよ。だけど苛烈に求め続けられると、ほとんど観念するようにほだされてしまうのが悲しくも人間的である。身の回りの世話をさせ、思い通りにいかないと暴れ、相手の自立を妨げようとする家父長制と幼児性はやはり重なり合うものがある。完成間近のマイホームに足りないのは理想の妻と言わんばかりに、どれだけ愛の言葉を並べても彼は結局、家具や車を選ぶようにしか女を求められない、動物のようにしか見なしていないのだった。そして恋人同士であれレイプ同然の事後に流すリリさんの涙に、突然わたしの脳内でマチェットを振り回すバイオレンス映画が始まりかけたけれど、彼女には脱出できる強さがあった。出産のモザイクが完全に取り払われる日はまだ遠い。
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