YasujiOshiba

Megalopolis(原題)のYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

Megalopolis(原題)(2024年製作の映画)
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イタリア版BD。25-23。日本に来そうにないのでイタリア語音声・イタリア語字幕で鑑賞。コッポラの音声ガイダンスやバックステージ、「40年の旅」というタイトルでこの映画が生まれるまでのドキュメンタリーなどがあり。

サイレント史劇を見ているような不思議な感覚。そのうちに英語版で見直すつもり。アメリカを帝国と考えるのは新しい話じゃないし、そもそものスタートは40年前なのではあるのだけれど、今の世界のパラブルのようにも見えるのが面白い。そうパラブルなんだよね。SFだし寓話なんだよね。それもあのゾエトロープ・スタジオの夢を描く寓話のようにも見える。

映画のなかでは「メガロン」という建築素材の物質の発明が語られるのだけどそれって「ゾエトロープ」なんだろうなと漠然と思ってしまった。コッポラの夢なんだよね。そこに映画監督の夢と建築家の夢そして政治家の夢が交錯しているわけだ。

物語の背景に想定されているのは共和制から寡頭体制に移行しつつあるローマなのかな。共和制(アメリカ的にいえば民主制)は残っていて、独裁者は嫌悪されているの段階。帝政への移行の前のローマに、メガロンという新しい技術が新しい夢を見せてくれるという楽観的な未来像。コッポラのなかにあるのはこういう楽観主義だというのは薄々感じていたのだけれど、私財を投げ売って形にして見せてくれたことには拍手するしかない。

なんだか黒澤明の『夢』のような映画でもあり、フェリーニの『ボイス・オブ・ムーン』のような映画でもある。生きる=映画を撮ることへの楽観的なイメージにあふれているのだけど、その裏側には実のところ悲しくてやりきれない思いがあるのではないだろうか。

とりわけ、トランプとゼレンスキーが全世界のメディアの前で大げんかしてしまう世界に生きているぼくらには、コッポラの楽観主義に悲しさを感じないではいられないのだ。
YasujiOshiba

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