日本版DVD。25-46。日本語字幕。ウベルト・パゾリーニ祭り。落涙。昨日見たアメリオの『戦場』に続いてテーマは「死」。それに加えて「許し」。だから落涙。
ウベルトに言わせれば「この映画が描くのは他人の人生の価値、他人の人生に関わることの大切さ、自分の人生つまり私たちの人生を他人へと開放する大切さ」だ。
だからこそ「死」が媒介になる。他者の死に対して、近親者の死のように扱えるのか。そして縁を切った最悪の親のなかに、微かでも善なるものを見出し、かすかなでも愛の温もりを思い出し、感じることができるようになるかが問われている。
出発点は自治体の公務員のインタビュー記事だったという。孤独死した人の身寄りを探し、財産を処理する公務員の話を読み、興味を掻き立てられて脚本を書いたという。それはまったく知らなかった世界。その世界に接近するための脚本であり、映画だったというわけだ。
映画のスタイルは実に落ち着いたもの。カメラは固定され。平凡だが繊細なショットがエディ・マーサンの心地よい動きを追う。まるでお茶の作法のような日常、仕事の段取り、葬儀のとりしきり。ただ、彼が相手のするのは死者。だから「動かない命」(Still life)なのだろう。動かないけれどもそれは命(life)だという作法。なるほど「みおくりの作法」ということか。
ウベルトの映画も、アメリオがそうであったように、モダーンでありながら反時代的なのだ。気を衒うようなショットがない。激しく暴力的にやれば刺激的なものにはなる。そういう映画はしかしその時だけのもので、あとに残るものがない。あとに残るのは静かで落ち着いていて染み込んでくるような映像なのだという。
しかしラストシーンでは見せてくれる。うそだろと思わせておいて、泣かせてくれる。そこで終わるのかというところで、いや違うのだよ、だってこれを見たかったんだろうというものを見せてくれる。あざといとは言わない。それが映画なんだよ。そしてやはりそこで終わるんだよ。
まったく、やられてしまった。超おすすめ。
それにしてもこの映画のリメークが『アイ・アム・まきもと』(2022)だったのか。エディ・マーサンが阿部サダヲで、ジョアン・フロガットが満島ひかりなんだろうな。これも観てみたくなってきたけれど、その前にウベルト・P祭りをもう少し続けなきゃ。
追記:
音楽も良い。レイチェル・ポートマンは「1997年に『Emma エマ』で女性として初のアカデミー賞の作曲賞を受賞」とあり「それ以後は、特にラッセ・ハルストレム監督との仕事で高い評価を得ており、『ショコラ』と『サイダーハウス・ルール』でもアカデミー賞の候補になっている」のだそうだ。なるほどね。
そのポートマンはウベルトの元妻なのね。1995年に結婚し、2006年離婚、娘が3人とある。この映画を撮る頃には離婚しているのだけど、なるほど娘がいるのかと、映画のなかのジョアン・フロガットが依代となったケリーのことを想ってしまった。
なお、ポートマンはウベルトの最新作『Itaca - Il ritorno (The Return)』(2024)にも音楽を書いているようだ。