不乱苦

ポーカー・フェイス/裏切りのカードの不乱苦のレビュー・感想・評価

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色々と「足りない」映画だった。
まず、登場人物の描き込みが足りない。
前半の少年たちが後の……というつながりが全然分からず、見ているうちにじわじわと「こいつがあいつか」となんとなく忖度してようやく理解できる程度なのは、前半での人物像と、大人になった彼らの人物像に明確な相関関係が浮かんでこないからだと思う。見ていても、いったい誰のなんの話かわからないまま進んでいき、分かった頃には話はそれどころじゃなくなってしまう。
原因としては時間の足りなさも大きいだろう。1時間40分弱という尺は短い。しかし、明らかに無駄なシーンに時間をかけている。特に前半、主人公の豪邸に至る前の様々なシーン、思わせぶりなカットが、無闇に観客を混乱させるだけで、さほど意味がない。そんな時間があったら、リアム・ヘムズワースたちのエピソードを見せた方が良かったんじゃないのか。もしくは、ラッセル・クロウのことも、この思わせぶりなカットや祈祷師のシーンを見ててもよくわからないんだから、他に見せるべきシーンがあるんじゃないかと思わずにいられない。
そして、見せ場も、全然足りない。ただでさえ全編とっ散らかった話が慌ただしく流れていくので、最後は瞬間的にでも盛り上がるところを用意して欲しかった。暗いところで揉み合い、銃で牽制しあったまま膠着、全然撃たない散弾銃を打ったかと思ったら弾は全弾絵画に当たってるし、悪役のボスは自分で勝手に死ぬ……。
ラストシーンでなんかいい話としてまとめられるが、全くピンと来ない。僕は娘を持つシングルファーザーなので、父娘ものの映画(例:コマンドー、インターステラー)には評価が甘くなる傾向があるが、本作は甘くしようがなかった。怒りが湧いてくるようなダメさや、身も凍るような薄ら寒さはないし、絵作りもリッチで見ていて飽きも来ないが、全く味がしない映画でした。
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