不乱苦

陰陽師0の不乱苦のレビュー・感想・評価

陰陽師0(2024年製作の映画)
5.0
昔夢枕獏のファンで、原作はよく読んでいたが、漫画版や過去の映画は未見。
よく読んでいたと言っても20年は前の話。娘が(昔漫画版を読んでいたので)観たいと言うので半ば嫌々ついて行ったが、これがまあ、まんまと楽しんでしまった。
原作は晴明と博雅の酒飲み談義とバディものとしての悪霊退治が見所で、古くはホームズ、最近だと応天の門に見られる定番を、平安時代の陰陽師で描いているのだが、その前日譚でありつつ、その辺りの美味しいところはしっかりと押さえられている。と言うか、わたしも随分前に読んだきりなので記憶が不確かなのだが、原作を読んでいた時の気分が蘇ってくる設定そして芝居だった。
今や原作ものの主人公ならなんでも来いな山崎賢人は、相変わらず上手いのか下手なのかよくわからない演技力で、若かりし日の晴明の小生意気な雰囲気を十分に表現できていたし、染谷将太は、博雅の人の良さとかわいさ、ちょっととぼけた感じがよく出ていた。この二人が固まればあとはなんとでもなるだろうが、助演俳優陣が誰もが知るベテランの目白押し。抜かりのない布陣だ。
前半は派手なCGを用いず、落ち着いた演出で政治劇を見せてくれるところがよい。できればこの調子でド派手な超常現象が起こらないまま進んで欲しかったのだが、そうもいかないのであろう。CGが多用され始めるとやはり粗が気になってくる。晴明のワイヤーアクションとか周りにお花がわんさか咲き乱れる演出とか、ヘボくて目を覆いたくなったが、そんな時に限ってアホみたいなセリフも飛び出してくるので耳も塞ぎたくなる。
それでも採点が甘くなってしまうのは、晴明と博雅の楽しい掛け合いが久しぶりに見られただけで、もう素直に嬉しくなってしまったのだ。わたしは今もこの二人のことが好きだったらしい。そしてわたしは、はっきり言ってバディものに弱い。
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